家族性腫瘍
Online ISSN : 2189-6674
Print ISSN : 1346-1052
症例報告
TP53 胚細胞遺伝子変異を有する重複癌症例
田村 和朗 坂上 隆津田 聡司福田 小百合西上 隆之高川 哲也三輪 洋人松本 誉之
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2006 年 6 巻 2 号 p. 53-57

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抄録

発端者は65 歳男性で,43 歳時の左腎癌を初発癌とし,以後22 年間に6 臓器・11 種の腫瘍に罹患した.そのうち,少なくとも7 種は原発性悪性腫瘍と確認され,若年時発症と多発性が認められた.家族歴において,同胞6名中4 名に,また子どものうちの1 名とその子ども(孫)の1 名に悪性腫瘍の罹患歴があり,明らかな家族集積性を認めるとともに癌の易罹患性素因が常染色体性優性遺伝形式で伝達されており,LFS-like families と考えた.TP53遺伝子,CHEK2 遺伝子,さらにミスマッチ修復遺伝子解析を行った.その結果,TP53 遺伝子にc.733G > A,p.G245S のミスセンス変異が同定された.それ故,常染色体優性遺伝疾患の認識から,発端者とその血縁者は遺伝的背景をもとにした癌のハイリスク状態にあることが推測され,生涯にわたるサーベイランスを行う必要があると考えられた.しかし,本症は罹患臓器が広範であり,また小児期から継続して定期的な検査が必要であるため,侵襲が少なく効果的な検査法を選択しながら継続して腫瘍の早期診断に努める必要がある.

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© 2006 The Japanese Society for Familial Tumors
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