家族性腫瘍
Online ISSN : 2189-6674
Print ISSN : 1346-1052
特集1:家族性内分泌腫瘍
MEN2 の甲状腺髄様癌の臨床像と治療
宮内 昭
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ジャーナル オープンアクセス

2007 年 7 巻 2 号 p. 71-74

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抄録
甲状腺には良性・悪性の腫瘍ができる.その大部分は甲状腺ホルモンを作る濾胞細胞からできる腫瘍であり,乳頭癌や濾胞癌はその代表である.甲状腺には濾胞細胞のほかに少数のC 細胞(以前は傍濾胞細胞と呼ばれた)があり,これは血中カルシウム値を低下させる働きがあるカルシトニンを分泌する.不思議なことにこの細胞は大腸癌や乳癌など多くの癌で産生されるCEA(癌胎児性抗原)も作る.甲状腺髄様癌はこのC 細胞から生じる癌であり,患者の血液中のカルシトニン,CEA 値は高値である.比較的まれな癌であり,欧米では甲状腺癌の5 〜10 %と報告されているが,わが国では1.5 %とさらにまれである.しかし,この癌の約1/3 は家族性,遺伝性に発生し,このような場合にはしばしば他の異常を伴うので特別な注意が必要である.さらに,家族調査を行うことによって,とくに若年の血縁者において早期発見,早期治療することができることは大変重要な点である.
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© 2007 The Japanese Society for Familial Tumors
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