農作業研究
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暖地二毛作に対応した畝立て直播機の開発と評価
深見 公一郎高橋 仁康中野 恵子岡崎 泰裕松尾 直樹西村 修淺野 和人関 英一
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2022 年 57 巻 4 号 p. 239-251

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抄録

開発機はトラクタの後方に装着し,畝成形補助部でタイヤ跡を均し,畝成形部で表面が硬い台形断面状の播種畝を成形して圃場の漏水防止を図り,直播作業部,種子繰出部および覆土鎮圧部で畝の天面に播種することで,生育初期の降雨・滞水による湿害回避を図る構造とした.また,本機は,水稲以外に大豆や麦類播種にも対応し,作業幅:210 cm,条間:30 cm,条数:7,適用トラクタ出力は40~60 PS(29.4~44.1 kW)とした.現地試験の結果,灰色低地土圃場(熊本県玉名市)において,播種2週間前から前日までに214 mmの降雨があり,土の付着が顕著となる塑性限界:32%より10%高い水分条件(含水比:42%,液性指数:0.4)でも播種作業が可能であった.開発機の作業能率は,圃場面積60~72 a,作業速度3.5 km/hにおいて12 min/10aとなった.2015~2021年度における畝立て直播試験と降雨量の関係から作業可能降水量を播種当日:7 mm,前日:29 mm,前々日:48 mm以下と定義すると,各作目の播種適期における作業可能日数は,10年(2012~2021年)平均で水稲:24日,大豆:22日,小麦・大麦:26日と推定された.また,畝立て直播機の作業能率に基づいた各作目の作業可能面積は水稲:67 ha,大豆:61 ha,小麦・大麦:73 haと算出された.さらに,経営耕地面積50 ha(土地利用率:200%,転作率:40%)において,畝立て直播機を汎用利用した場合の水稲の60 kg当たりの費用合計は,九州の慣行体系に比べ39%低減すると推定された.

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© 2022 日本農作業学会
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