農作業研究
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ヘアリーベッチすき込みおよびマルチ圃場でのトマトの生長と収量
堀元 栄枝荒木 肇石本 光明伊藤 道秋藤井 義晴
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2002 年 37 巻 4 号 p. 231-240

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抄録

ヘアリーベッチ(Vicia villosa Roth)を用いたトマト生産システムの確立のため,トマト(Lycopersicon esculentum Mill.)の生長および収量におよぼすヘアリーベッチのすき込みやマルチ(不耕起)の効果と元肥窒素肥料(0~120kg/ha)の効果を調査した.試験は1997年と1999年に行い,対照としてヘアリーベッチを前作せずに耕起した慣行栽培圃場を用いた.トマト葉柄汁液中の硝酸イオン濃度は定植後42日後に最も高くなった.慣行栽培圃場では定植後56日には1,000ppm以下に低下したが,ヘアリーベッチすき込みおよびマルチ栽培圃場では2,000ppm以上を維持していた.トマトの生育指数(GI)はヘアリーベッチすき込みおよびマルチ栽培圃場で慣行栽培圃場より高くなり,窒素施肥量によるGIの差異は認められず,窒素無肥料でも収穫開始時に必要とされるGIに到達した.トマト生育初期の葉柄汁液中の硝酸イオン濃度およびGIはヘアリーベッチすき込み栽培圃場よりマルチ栽培圃場で高くなった.ヘアリーベッチすき込みおよびマルチ栽培圃場のトマト収量は両年とも慣行栽培圃場より増加し,特にマルチ圃場では0~60kg/haの窒素施用でも120kg/ha窒素施用の慣行栽培圃場と同等の収量を示した.増収は収穫初期から中期に認められた.慣行栽培圃場でのトマト収量は施用窒素量に応じて増加したが,すき込みおよびマルチ栽培圃場とも窒素肥料によるトマトの増収は認められなかった.以上から,トマト生産において前作したヘアリーベッチをすき込みあるいはマルチとして利用すると,慣行栽培法と比べて葉柄汁液中の硝酸イオン濃度を高めてトマトの生育促進と増収に結びつき,特にマルチ栽培圃場で顕著であった.ヘアリーベッチを前作してすき込みやマルチとする生産体系により窒素肥料の減少が可能となるであろう.

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