抄録
介護予防の柱の一つである「口腔機能の向上」プログラムの効果の経時的変化を検証する目的で, 本研究を行った。
通所介護施設に通う高齢者のうち, 「介入群」として6名に対し, 3カ月間に6回の口腔機能向上プログラムを2週に1回提供した。その後11カ月の休止期間をおいて, 同様のプログラムを再度3カ月間提供した。この「介入群」に対して1回目の介入前後, 2回目の介入前後の計4回健診を行った。一方「健診のみ群」として, 12名に「介入群」と同時期に健診のみ行った。健診では口腔機能評価として, (1)RSST, (2)オーラルディアドコキネシス, (3)フードテスト, (4)口腔粘膜湿潤度テスト, (5)ぶくぶくテストの5項目, 口腔衛生評価として, (1)食物残渣, (2)舌苔, (3)歯·義歯の汚れの3項目を評価した。その結果, 「健診のみ群」ではオーラルディアドコキネシスで一部機能低下が認められたのに対し, 「介入群」においては期間中機能がほぼ維持できていた。しかし, RSST, 口腔衛生評価 などでは, プログラムにより検査値が向上するものの休止期間に元に戻る傾向が認められ, 継続的な介入の必要性が示唆された。さらに, 種々の理由からプログラムの中断を余儀なくされる者も少なからず存在することから, 継続できる環境づくりまで含めた支援が必要であると推察された。