口腔機能低下症と診断された患者に対しては適切な口腔機能管理を実施することが求められる。しかし,算定要件により口腔機能管理料の算定対象とならない患者が存在していると考えられる。そこで本研究は,口腔機能低下症の診断のための口腔機能検査法の組み合わせと口腔機能管理料の算定可否との関係を明らかにすることを目的とした。
東京歯科大学水道橋病院補綴科を定期健診で訪れた65歳以上の患者で,口腔機能低下症と診断された80名を対象とした。本研究では口腔不潔を①-1:細菌カウンタ,①-2:TCI,咬合力低下を③-1:感圧フィルム,③-2:残存歯に分け,組み合わせを変えて評価した。条件ⅰ)①-1と③-1,条件ⅱ)①-2と③-2の組み合わせで,a )口腔機能低下症の割合,b )口腔機能低下症かつ,口腔機能管理料算定可能な割合を算出した。
条件ⅰ-a(取り込み基準と同じ)とⅰ-bは100%,条件ⅱ-aは86.3%,ⅱ-bは56.3%であった。本研究より,算定要件である4つの検査をすべて実施できる歯科医療機関では,口腔機能管理料による口腔機能管理がおおむね実施できていると思われる。一方で,条件ⅱの結果から,必要な口腔機能管理の対象とならずに取りこぼされる患者がいる可能性があると考えられる。検査機器の普及の途中である現在においては,口腔機能低下症と診断されたすべての患者が必要な管理を受けることができる対応が求められる。
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