老年歯科医学
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総説
臨床報告
  • 青嶋 美紀, 菊谷 武, 山田 裕之, 仲澤 裕次郎, 戸原 雄, 宮下 直也, 岸 知仁, 田村 文誉, 砂田 勝久
    2024 年 39 巻 3 号 p. 156-161
    発行日: 2024/12/31
    公開日: 2025/01/24
    ジャーナル フリー

     目的:日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニックは,年間約1万人の患者を診療し,その多くは高齢者で基礎疾患に加え複数の併存疾患を抱える。初診患者の約60%が75歳以上であり,17%に認知症が認められる。認知症は重症化に伴い,見当識障害や指示理解が困難になることから,治療に対し拒否行動を起こすことが多く,その際には何らかの行動調整の介入が必要である。

     当クリニックでは認知症高齢患者に対し,薬物的行動調整として静脈内鎮静法下にて歯科治療を行っている。今回,我々は2017年4月から2023年12月の期間に静脈内鎮静法下で歯科治療を受けた認知症高齢患者20名について,患者概要と処置内容の実態を明らかにすることを目的に後ろ向き調査を行った。

     方法:診療録および麻酔記録を基に,患者情報,歯科処置内容,静脈内鎮静法の内容などについて調査した。

     結果と考察:静脈内鎮静法下で行われた歯科処置は90%が抜歯処置であり,そのうちの80%が2歯以上の多数歯抜歯であった。予定されたすべての処置が,静脈内鎮静法下で行うことができ,術中および術後の偶発症もみられなかった。また,患者の多くがその後,義歯製作や保存処置,歯周処置などを通常管理下にて継続的に受療できたことから,静脈内鎮静法を応用した歯科治療の有用性を示すことができた。

調査報告
  • 友岡 祥子, 水谷 慎介, 田渕 裕朗, 奥 菜央理, 井上 良介, 山添 淳一, 岩佐 康行, 柏﨑 晴彦
    2024 年 39 巻 3 号 p. 162-170
    発行日: 2024/12/31
    公開日: 2025/01/24
    ジャーナル フリー

     我が国は超高齢社会であり,歯科医師は高齢者に対する幅広い知識と患者に合わせた対応が求められており,臨床実習生も,高齢者歯科における外来臨床実習や歯科訪問診療実習を通して,高齢者とのかかわり方を学んでいる。現在,歯科臨床実習が臨床実習生に与える影響を調査した研究はほとんどなく,新型コロナウイルス感染症流行による外来臨床実習の中断などの影響に関する報告も少ない。そこで本研究では,2019年度から2021年度において歯学部臨床実習を受けた学生91名を対象に,実習前後における高齢者に対する意識および高齢者歯科医学における知識についての自己評価の変化を調査することを目的とした。調査には,高齢者に対する行動目標や到達目標の指標となる項目が示された,要求される能力に関する質問紙と高齢者に対する感情的な態度を測定する日本語版Koganʼs Scale of Attitudes Towards the Elderlyを用いた。対象学生はすべての実習修了時,みずからの能力の上昇に肯定的な評価を認めた(p<0.01)。高齢者に対する態度についても,肯定的に変化していた(p=0.012)。実習前後の各調査項目における変化量について,歯科訪問診療実習の経験の有無および外来臨床実習の中断期間別に比較したところ,群間に統計学的な有意差は認められなかった。本研究により,臨床実習を通じて,高齢者に対する態度や要求される能力に対する自己評価に変化が認められた。高齢者に対する意識および高齢者歯科医学における知識についての自己評価の変化を評価することは,高齢者歯科医学の学修効果の確認や,今後の教育内容を向上するための一助となる可能性があると思われる。

  • —2023年6月の社会医療診療行為別統計から—
    佐藤 裕二
    2024 年 39 巻 3 号 p. 171-177
    発行日: 2024/12/31
    公開日: 2025/01/24
    ジャーナル フリー

     目的:社会の高齢化に伴い医科歯科連携の重要性が評価され,健康保険には総合医療管理加算(総医)・歯科治療時医療管理料(医管)という項目がある。また,情報共有や提供のために,診療情報提供料Ⅰ(情Ⅰ)や診療情報連携共有料(情共)が設定されている。そこで,上記項目の保険算定実態を明らかにすることを目的にした。

     方法:2023年6月の社会医療診療行為別統計から,診療所と病院ごとに,一般医療と後期高齢者医療(後期医療)に分けて,総医,医管,情Ⅰ,情共の件数を抽出し,1医療機関あたりの件数,患者一人あたりの算定率を算出した。

     結果:1医療機関あたり,総医,医管は,病院が診療所の2倍程度の件数であったが,情Ⅰや情共では20倍以上であった。いずれも後期医療の割合が半数程度であったが,情Ⅰのみは20%前後であり,後期医療が少なかった。

     算定率は,総医は1%以下,医管は5%以下であり,いずれも後期医療で多く,診療所と病院で大差はなかった。情Ⅰは,診療所では一般医療と後期医療で大差がなく1%以下であり,病院では高く,一般医療が多かった。情共は,後期医療や病院で多かったが,いずれも非常に少なかった。

     考察および結論:総医,医管,情Ⅰ,情共の算定は少なく,医科歯科連携は不十分であることが明らかになった。この根本的な原因としては,医科への照会である情共の算定が特に少ないことであり,何らかの対策の必要性が示唆された。

活動報告
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