老年歯科医学
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調査報告
高齢者訪問歯科診療への歯科医師の意識の研究
―口腔ケアにおける他職種連携の推進―
阿部 綾子高木 安雄
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2014 年 28 巻 3 号 p. 296-303

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抄録

近年在宅医療が推進されているが,歯科診療において,未受診,未治療の在宅高齢患者が増加していると推測されている。口腔ケアは,誤嚥性肺炎予防に有効と考えられており,患者の QOL も改善する。在宅高齢者のために,訪問歯科診療の推進をする必要があるため,訪問歯科診療に対する歯科医師の意識について研究した。 本調査は A 市内で開業する歯科医院291医院283名の歯科医師について質問紙調査を実施した。70部を回収し,1部を除外した(有効回答率 24.7%)。回答者は,訪問歯科診療を行っている歯科医師は22名,行っていない歯科医師は47名であった。 質問紙調査は15項目を設定し,「訪問歯科診療の有無」との有意差の検定のためMann-WhitneyのU検定,Fisher の直接確率検定を行った。潜在変数間の関係を調べるために構造方程式モデリングによる分析を行った。 訪問歯科診療実施の有無は,「介護職との連携の有無」,「研修受講経験の有無」,「在宅療養支援歯科診療所は,訪問歯科診療に役立つと思う」「訪問歯科診療の必要性を感じる」「出身大学で学生時代に訪問歯科診療の講義受講経験がある」という5項目に有意な差がある,という結果となった。また,他職種研修は,歯科医師の訪問歯科診療への意識を高めることに間接的な効果があることがわかった。 訪問歯科診療には,他職種との連携の整備,他職種との領域の明確化のためのマニュアルの作成,歯科医師,他職種への研修制度の整備が必要だと考えた。

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© 2014 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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