本研究は,介護保険施設において肺炎予防などに関連が強い口腔健康管理の励行に関して,看護・介護専門職間の認識と励行度と行動特性との比較を目的とした。2014年に新潟県内の介護保険施設の3,001人の看護・介護職従事者を対象に,口腔健康管理に関する質問紙法調査を実施し51.6%の回答を得た。
介護保険施設における口腔健康管理の現状の担い手は看護師,准看護師,介護福祉士および介護士の4職種(以下,4職種)とし,自身の口腔健康管理に対する日常習慣と入所高齢者への口腔健康管理に関する認識と励行度との関連を二値ロジスティック解析(b-LRA)で解析した。入所者に対する口腔健康管理への認識と励行度を表す8項目を標準化し合算し,平均値で2区分して目的変数とした。
一方,説明変数は職種,性別,年齢区分など5項目の基本属性に加えて4職種自身の歯磨き回数など,口腔健康管理の励行度11項目,計16項目を用いた。b-LRAで交絡因子を調整した結果,看護師は他3職種との比較で,入所高齢者に対する口腔健康管理の認識と励行度がいずれも有意に低かった(p<0.01,p<0.0001,p<0.0001)。その他の口腔健康管理関連要因は4職種自身の歯磨き回数と時間が高度に有意,また,全身状態の改善の経験があると認識と励行度が高い(p=0.0258)などが示された。
以上の結果から,入所高齢者を対象とする口腔健康管理の質の改善には看護師自身の意識と知識の向上が不可欠と考えられた。