目的:歯科訪問診療のあり方を考えるうえでの基本情報を得るために,26年間における歯科訪問診療関係の歯科診療報酬項目の変遷,主な項目および新規医療技術の算定件数および医療費の推移を調査した。
対象と方法:1996年から2021年までの26年間における歯科訪問診療関係の歯科診療報酬項目の変遷を社会医療診療行為別統計で調べた。継続性のある項目(歯科訪問診療料,リハビリテーション関連)と,近年,新規医療技術として採択された項目(フッ化物歯面塗布処置(在宅等療養患者),在宅等療養患者専門的口腔衛生処置,非経口摂取患者口腔粘膜処置)の算定状況の推移を調査した。
結果:歯科訪問診療料の件数は2008年から急増し,訪問診療料3が追加された2013年からはさらに急増した。摂食機能療法は1996年から増加を続け,2011年頃から急増した。フッ化物歯面塗布処置(在宅等療養患者),在宅等療養患者専門的口腔衛生処置,非経口摂取患者口腔粘膜処置の算定件数はわずかであった。
考察:歯科訪問診療の受診者数は,要介護高齢者の数を上回るペースで確実に増えており,新規導入医療技術は,普及はしているが必ずしも十分とはいえなかった。これらのさらなる普及のためには,日本老年歯科医学会や日本歯科医学会による指針の充実なども重要であることが考えられた。
結論:社会医療診療行為別統計において,歯科訪問診療関連項目はさまざまな管理料が導入され,歯科訪問診療の回数と医療費は着実に増加しているが,新規採用医療技術はさらなる充実が必要である。