2026 年 41 巻 supplement 号 p. 31-35
緒言:在宅介護では,要介護高齢者の摂食嚥下機能低下は食事介助時間の延長を通じて介護負担の増大につながる。義歯の使用状況は食形態や栄養状態と関連し,口腔機能訓練と食支援を組み合わせた介入は高齢者の栄養状態改善に有効である。今回,義歯不使用に伴う咀嚼機能低下,体重減少,食事時間延長を認めた在宅要介護高齢者に対し,義歯作製と口腔健康管理を行い良好な経過を得た1例を報告する。
症例:88歳女性。主訴は食事摂取量の減少と体重減少。咀嚼に義歯が必要な残存歯の状態であったが1年以上義歯を使用しておらず,1日の食事に3時間以上を要していた。
経過:初診時の診察結果を踏まえ,歯周基本治療,残根抜歯,週1回の口腔衛生管理,口腔機能訓練,食形態の調整,食事姿勢指導,離床促進を行いながら新義歯を作製した。義歯装着2か月後,食事時間は1日約3時間から約2時間へ短縮し,体重は2 kg増加した。初診3か月後にはEAT-10および聖隷式嚥下質問紙の改善を認めた。唯一の介護者である長男より介護負担が減ったと申告があった。
考察:補綴治療と継続的口腔健康管理,摂食嚥下障害に対する支援は,在宅要介護高齢者の栄養状態,咀嚼・嚥下機能の改善のみならず,介護者負担軽減にも寄与する可能性が示唆された。