老年歯科医学
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高齢者の咀嚼能力と口腔内状況ならびに食生活との関連性について
寺岡 加代柴田 博渡辺 修一郎熊谷 修岡田 昭五郎
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1995 年 10 巻 1 号 p. 11-17

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抄録
60歳以上の有料老人ホーム入居者90名 (平均年齢74.9±5.2歳) を対象に残存歯数, 咀嚼能力の評価, 義歯の使用状況および使用感, 口腔内不快症状, さらに食生活に関する調査を行った。その結果にもとずき, 咀嚼能力と口腔内状況との関連性や, 咀嚼能力の低下が食習慣や食意識に与える影響について検討した。
咀嚼能力の評価はG-1ゼリー法を用いて行い, 対象者をI群 (咀嚼能力維持群), II群 (中間群), III群 (低下群) の3群に分けた。
先ず, 咀嚼能力と口腔内状況との関連をみた結果, 残存歯数とは非常に高い相関関係があった。また義歯を使用することによって咀嚼力の改善を認めた者は, I, II群では80%以上いたが, III群では半数に満たず, 咀嚼力に代わって発音や審美面での改善を挙げる者もいた。口腔内不快症状の訴えもIII群で最も多かった。
次に咀嚼能力と食生活との関連をみた結果, III群では食品摂取頻度において主食はパン食が多く, 副食は魚介類が少く, 肉類 (特に加工肉類) や油脂類の多くなる傾向がみられた。また昼食を欠食する者がいた反面, 間食は「ほぼ毎日食べる」者が多かった。食意識に関しては「何を食べるか」すなわち食物自体だけでなく, 「誰れと食べるか」すなわち人的環境を重視する者が, II, III群においては半数を占めた。
以上の結果より, 高齢者においては義歯の使用感や口腔内不快症状が咀嚼能力と関連すること, また咀嚼能力の低下は食習慣や食意識にも影響をおよぼすことが示唆された。
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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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