老年歯科医学
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大阪大学歯学部付属病院「リスク患者総合診療室」における高齢者の全身管理
金 容善丹羽 均渋谷 徹高木 潤旭 吉直崎山 清直市林 良浩松浦 英夫
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1998 年 12 巻 3 号 p. 190-197

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抄録
大阪大学歯学部付属病院「リスク患者総合診療室」では, 各診療科から歯科治療時の全身管理を依頼された症例に対し, 我々歯科麻酔医が術前診察と必要な検査を行い, リスクの程度と治療内容に応じて, 予定症例として術中の全身管理を行うことを主な業務としている。また, 術中に全身的偶発症が生じたり, 管理対象となる全身的基礎疾患を有する患者に歯科疾患の急性症状が現れた場合に, 緊急症例として全身管理を依頼されることも多い。今回は, 1986年4月以来11年間の全身管理症例のうち, 65歳以上の高齢者の管理経過を分析した。
65歳以上の高齢者の占める割合は年々増加し, 1986年度の10.1%から1996年度には33.8%を占めるに至った。また, 高齢者の97.6%が管理対象となる全身的基礎疾患を有しており, その大多数は循環器系疾患で, しかも61.4%が2つ以上の基礎疾患を合併していた。管理方法では, 高齢者に対しても積極的に精神鎮静法を施行しており, 管理症例の63.5%に笑気吸入鎮静法を適用した。術中の血圧コントロールには, 調節性に富む亜硝酸剤を主に使用した。幸い, 重篤な全身的偶発症は経験しなかったが, 緊急症例24例中16例, および予定症例における偶発症発症症例8例中7例が最近4年間のものであり, 本学歯学部付属病院における「リスク患者総合診療室」での我々歯科麻酔医の働きは, 今後さらに重みを増すものと考えられた。
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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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