老年歯科医学
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高齢者に対する静脈内鎮静法の術後管理に関する検討
今渡 隆成樋浦 善威石田 義幸川並 真慈小野 智史川田 達
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2001 年 15 巻 3 号 p. 254-259

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抄録

日之出歯科真駒内診療所で平成5年3月より平成12年9月までの7年6ヵ, 月間に, 入院下で歯科治療を行った65歳以上の高齢者のうち, 静脈内鎮静法を施行した304例を対象とし, 静脈内鎮静法後24時間以内にみられた合併症を検討した.
平均年齢は73.2±6.6 (S.D.) 歳.鎮静薬はミダゾラム, ジアゼパム, フルニトラゼパムが使用されており, 平均使用量はそれぞれ0.045mg/kg, 0.093mg/kg, 0.008mg/kgであった.
304例中56例 (18.4%) で術中合併症が, 304例中74例 (24.3%) で術後合併症が認められたが, 術中・術後合併症の有無による鎮静薬投与量に差は認められなかった.術後2時間以降も25例で合併症が発生しており, 夜間就眠時にいびきが観察された症例も9例あった.
術後合併症として誤嚥を認めた症例では, 83%で脳梗塞後遺症を合併していた.高齢者では喉頭の閉鎖不全などにより容易に誤嚥を起こす可能性があるとされ, 静脈内鎮静法後は, 出血や口腔内容物の無症状誤嚥と食事摂取時の誤嚥には特に注意が必要と思われた.
以上より, 生理的機能に個人差の大きい高齢者では術前に鎮静薬の効果延長や合併症発症の予測は困難で, 今回の結果でも静脈内鎮静法後4~5時間にわたって, 鎮静薬投与が影響したと思われる合併症が出現していた.したがって, 高齢者に対する静脈内鎮静法は術後4~5時間の経過観察もしくは入院下での施行が望ましいと考えられた.

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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