老年歯科医学
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東京都葛飾区における在宅寝たきり老人の歯科治療
第4報たんぽぽ歯科診療所における印象採得が呼吸・循環動態に及ぼす影響
岡 俊一高田 耕司見崎 徹森谷 良孝森谷 良彦島田 雅章根岸 哲夫山崎 一男塚本 亨白橋 知幸
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2001 年 16 巻 2 号 p. 165-170

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抄録
我々は寝たきり老人を対象に, 印象採得が呼吸機能および循環動態に及ぼす影響について, 2種類の印象材を用いて調べた。
全顎印象採得を必要とする患者20例を, 印象材の種類により無作為にI群: アルジネート印象材使用群, II群: シリコーンラバー印象材使用群の2群に分けた。
測定項目は, 終末呼気炭酸ガス濃度 (ETCO2), 呼吸数 (RR), 経皮的動脈血酸素飽和度 (SpO2), 心拍数 (HR) および血圧 (BP) とした。測定は, 安静時, 上顎印象時, 下顎印象時, 印象採得後に行った。
その結果, ETCO2はII群で, 安静時35.4±3.7mmHgに比べ上顎印象時41.9±2.1mmHgと有意に上昇した。さらに上顎印象時にII群はI群に比べて有意に高かった。RRはII群で, 安静時21.8±1.7回/分に比べ上顎印象時16.7±3.2回/分と有意に減少した。SpO2はII群で, 安静時99.0±0.9%, 上顎印象時95.6±2.0%, 下顎印象時97.0±1.3%と安静時に比べ上下顎印象時に有意に減少した。HRおよびBPは両群とも有意な変化はなかった。
本研究より, 寝たきり老人に印象採得を行う場合, 特に上顎印象時には印象時間を短くし, また呼吸状態を含めた全身状態のモニタリングを行う必要があると思われた。
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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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