老年歯科医学
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咬合支持の喪失とそれに伴う粉末飼料飼育への変更がラットの学習・記憶機能に及ぼす影響
牧浦 哲司池田 和博平井 敏博寺澤 秀朗石島 勉
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2001 年 16 巻 2 号 p. 179-185

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抄録
近年, 咬合・咀嚼機能と全身の機能との密接な関連が報告されている。特に, 歯の喪失が中枢神経系へ及ぼす影響が注目されている。本研究は, 咬合支持の喪失とそれに伴う粉末飼料飼育への変更がラットの学習・記憶機能に及ぼす影響について検討した。
実験には, Wistar系雄性ラットを用い, 固形飼料にて飼育した固形飼料群, 25週齢時点で飼料を粉末に変更した粉末飼料群, 25週齢時点で臼歯歯冠部を切除し粉末飼料で飼育した臼歯切除群の3群を設定した。実験動物が40週齢になった時点で, 行動学的解析, 生化学的解析, 免疫組織学的解析を行った。
得られた結果は以下の通りである。
1. 受動的回避反応実験の反応潜時は, 固形飼料群に比して臼歯切除群において有意な短縮が認められた (p<0.05) 。
2. 大脳皮質のドーパミン濃度は, 固形飼料群および粉末飼料群に比して臼歯切除群において有意な低下が認められた (p<0.05) 。
3. 中脳腹側被蓋野におけるドーパミン作動性ニューロン数は, 固形飼料群に比して臼歯切除群および粉末飼料群において有意な減少が認められた (p<0.05) 。
以上の結果から, ラットにおける咬合支持の喪失とそれに伴う粉末飼料飼育は, 中脳腹側被蓋野におけるドーパミン作動性ニューロン数の減少, さらには大脳皮質へのドーパミン性入力の低下を引き起こすことによって, 記憶・学習行動に影響を及ぼす可能性が示唆された。
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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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