抄録
高齢無歯顎患者の義歯による健康の保持, 増進は活力ある高齢社会の構築にとって重要な課題といえる。歯を欠損した高齢者は, 義歯装着により咀嚼機能が改善されるばかりでなく, 日常生活の活動能力が向上し, 身体的, 精神的, 社会的にも健康になると考えられる。
今回, QOLの向上に関わると思われる義歯に関する不満や症状, 原因および社会要因まで含めた質問紙を作成し全部床義歯患者に対してアンケート調査を行った結果, 以下の結論を得た。
1. 全部床義歯患者の年齢とQOL要因問には負の相関が認められた。またQOL要因相互では全ての要因において有意に相関が認められた。
2. 義歯装着半年以内群と5年経過群における要因間の比較を行った結果, 全ての要因において義歯装着5年経過群の得点が有意に高くなった。
3. 下顎骨の高さとQOL要因間には全て負の相関が認められたが, 有意な相関が認められたのは, 義歯装着半年以内群では活動性, 5年経過群では機能と会話であった。
4. 因子分析を行った結果, 質問紙における尺度構城は機能的因子, 会話的因子, 審美的因子, 活動・心理的因子の4尺度になり, 合計27項目で構成された義歯に関する質問紙を作成した。