老年歯科医学
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老人保健施設における介護体験実習が歯学部学生に与える影響
戸原 玄伊藤 淳二水口 俊介植松 宏
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2002 年 17 巻 2 号 p. 168-176

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抄録

高齢化の進展しつつある日本では, 歯科を受診する高齢者数は増加し続けると予想される。またそれと同時に, 高齢化は, 要介護高齢者数の増加をも意味する。従って今後, 歯科医療従事者は, 要介護高齢者の抱える諸問題を理解し, おかれた状況を正しく把握することが必要となる。しかし現在の学生の世代は, 核家族化により高齢者とのかかわりが乏しく, 高齢者に対する理解は知識の範疇を越えないものが多い。そこで我々は, 一般的に連想される高齢者というイメージから脱却し, 歯科医療従事者としての要介護高齢者に対する理解を深めること, および介護・介助に対する理解を深めること, そして現存する問題点の把握を目的として, 歯学部5年生の学生実習に介護体験実習を組み込んだ。老人保健施設での見学, 食事および移乗の実習後にアンケートを行い, 歯学部学生が要介護高齢者の生活および口腔内環境をどのように理解したかを調査し, 体験実習の有用性および問題点について評価した。90%の学生が, やや不十分ながらも要介護者の身体機能・介助法に理解が深まったとし, 83%の学生が今回の実習に意味があったとしていた。また, 学生は要介護高齢者に潜在する様々な問題点を認識し, また介護・介助・リハビリテーションに対する理解を深めることができたと考えられた。今後とも更に効果的な実習方法を再考し, 継続していきたいと考える。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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