老年歯科医学
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高齢者の栄養摂取方法に関する研究
義歯使用に影響を及ぼす要因について
藤本 篤士小城 明子植松 宏
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2003 年 18 巻 3 号 p. 191-198

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抄録

義歯使用の実態と義歯使用に影響を与える要因について, 札幌市内の病院に入院中の65歳以上の患者1, 108名を対象に調査した結果, 以下の点が明らかになった。
1) 義歯を所持している高齢者のうち約15%は義歯を全く使用していない。
2) 少なくとも義歯が必要と考えられる咬合支持がない高齢者のうち約30%が義歯を使用していない。
3) 精神機能が西村式老年者用精神状態尺度で20点以上, 身体機能が西村式老年者用日常生活動作能力評価尺度で15点以上, 生活の自立度がLate loss ADLで13点以下, Body Mass Indexが13.5以上であれば義歯使用は十分に可能である。しかし, これ以下になると, その低下の程度と平行して義歯使用が不可能になってくるものと推測される。
4) 義歯の使用ができるための要因として, 精神機能, 身体機能, 生活の自立度, 栄養状態の4つの要因が考えられる。
5) 義歯使用に影響を及ぼす要因を年齢群別に検討してみると, 65~74歳では特に強く影響している要因はなく, 75~84歳では身体機能と栄養状態, 生活の自立度と活動性に関連があると考えられる要因が, 85歳以上になると精神機能すなわち痴呆の進行程度が強く影響していると考えられる。老化の進行とともに, 義歯使用に影響を与える要因が, 身体機能から精神機能へと変化してゆく可能性が示唆された。
高齢者が円滑で安全な栄養摂取を行うためにも, 義歯の適正な使用方法の研究が求められている。今後, さらに栄養サポートチームへ積極的に関わり, 歯科からの貢献方法を模索していく必要がある。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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