老年歯科医学
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高齢者の味覚機能に及ぼす要因に関する研究
花井 正歩玉澤 佳純高藤 道夫菊池 雅彦渡辺 誠
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2004 年 19 巻 2 号 p. 94-103

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抄録

高齢者の味覚機能の低下に, 4基本味の味覚識別能だけでなく, 全身および局所の状態や生活習慣がどのように関わっているかを解明することを目的に, アンケート調査と味覚機能検査を行った。アンケート調査では, 味覚機能の主観的評価についての質問と, 全身状態, 服薬状態, 口腔内状態などに関する質問を高齢群117名ならびに若年群165名に対して行った。味覚機能検査では, 唾液分泌量の測定, 全口腔法による味覚閾値検査, 電気味覚検査を高齢群45名ならびに若年群30名に対して行った。
アンケート調査の結果からは, 高齢者にみられる味覚異常感に関連する因子として, 口腔乾燥, 口腔粘膜不良, 義歯の不満足といった口腔内の問題が挙げられた。しかし, 味覚機能検査の結果では, 口腔乾燥や口腔粘膜不良の因子を有する被験者において, 味覚閾値は高くはなく, 逆にアンケート調査で味覚異常感とは関連が少なかった服薬や全身性疾患の因子を有する被験者において味覚閾値が高かった。また, アンケート調査で味覚異常感を訴えた被験者においては, 必ずしも味覚機能の低下はみられなかった。
以上のことから, 味覚機能の低下を訴える高齢者においては, 服薬や全身性疾患で影響される狭義の味覚機能だけでなく, 口腔内の問題や不満が広義の味覚機能に及ぼす影響ついても十分に検討する必要があることが示唆された。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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