【緒言】要介護高齢者に摂食・嚥下障害が多く存在することが報告されており, 対応が望まれている。誤嚥は咽頭期で起こるものの, その原因は準備・口腔期に多いことが報告されていることから, 口腔での食塊形成機能の評価は誤嚥のリスクを軽減するためにも重要である。本研究では, 要介護高齢者の先行研究として健常有歯顎者を対象に, 内視鏡を用いて咽頭内での食塊の状態を観察し, 食塊形成機能の評価法について検討した。
【方法】対象は健常有歯顎者10名とした。被験食として, 白色と緑色の米飯, 黄色と緑色のクッキーを準備した。被験者には, 米飯, クッキーのそれぞれ2色の同種被験食を同時に口腔内に入れ, 「普段どおり」食べることと「よく咬んで」食べることの2通りを指示した。このときの咽頭の食塊を内視鏡を用いて観察した。食塊の状態を, 粉砕の程度を表す粉砕度, 食塊のまとまりの程度を表す集合度, 2色の混ざり合いの程度を表す混和度の観点から評価した。
【結果】米飯: 「普通どおり」食べたときの食塊は, 粉砕度が低く, まとまりのないものが多かった。「よく咬んで」食べたときの食塊は, 「普通どおり」食べたときと比較して, 粉砕度が高く, まとまっていた。クッキー: いずれの場合の食塊も, 混和度粉砕度, 集合度ともに良好であった。
【考察】定性的な判定ではあるものの, 内視鏡での観察により食塊の状態の違いを判別できたことから, 内視鏡が食塊形成機能の評価に有用であると考えられた。