抄録
兵庫県歯科医師会が, 兵庫県国民健康保険団体連合会の協力を得て平成13年から実施している「8020運動」実績調査のなかで, 平成14年度と平成17年度に得られた70歳以上の高齢者の現在歯数を含む歯科ならびに医科診療報酬明細書の情報から, 現在歯数と年間医科診療費との関係, さらには平成14年度と平成17年度の個人データをマッチングさせたデータを使って現在歯数, 3年間の喪失歯数との関係について統計解析を行った。その結果, 2つの調査年はいずれも現在歯数が多い高齢者ほど年間の医科診療費が少なかった。性別では男性のほうが女性に比べて年間の医科診療費が多かった。一方, 平成14年度分と平成17年度分のデータをマッチングして行った追跡データの分析では, 平成14年5月時点の現在歯数, 3年間の喪失歯数が医科診療費の変化に影響を与えたという統計学的関連はみられなかった。これらの結果から, 現在歯数を指標とした口腔の状態と全身の健康にはなんらかの関係があり, 今後の口腔保健のあり方が全身の健康と医療費全体の削減に繋がる可能性が示唆された。