老年歯科医学
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高齢者の口腔粘膜水分量に関する研究
第1報口腔水分計の測定精度の評価
齊藤 美香小野 由起子北村 信隆山口 雅庸齊藤 力
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2008 年 23 巻 2 号 p. 90-96

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抄録
皮膚の角質層の水分量を測定する機器として肌水分計がある。この原理を応用して, 口腔粘膜の水分量を測定するために口腔水分計が開発された。その測定精度について調査した報告はない。そこで, さまざまな水分量で作製した固形寒天を測定資料として用いる方法を考案し, 口腔水分計の精度について検討した。
粉寒天を用いて固形寒天を作製した。粉量は2gのままで水分量を25mlずつ増減させ, 水分量25mlから300mlまでの合計12種類の液状寒天を作製した。それを一定体積になるように円形シャーレに注ぎ, 室温で固めた。測定には2種類の口腔水分計, モイスチャーチェッカームーカス (以後, 従来型と略す) と口腔水分計ムーカス (以後, 改良型と略す) を用いた。それぞれに専用のセンサーカバーを装着し, 各固形寒天の水分量を3回ずつ測定した。
従来型, 改良型どちらも水分量75ml未満の場合には, 固形寒天の含有水分量増加とともに測定値の上昇が認められた。Friedmanの順位検定により, 各含有水分量における口腔水分計測定値の間で従来型, 改良型ともに有意水準0 .001で有意差が認められた。2種類の口腔水分計間での比較では, 従来型よりも改良型による測定値のほうが高い値を示した。感度は従来型, 改良型とも75%, 特異度は従来型で95%, 改良型で100%, 陽性反応適中度は従来型で75%, 改良型で100%, 陰性反応適中度は従来型, 改良型とも95%であった。以上のことから従来型, 改良型の測定器固有の精度はどちらも比較的良好であるが, 口腔乾燥に対する臨床的予測精度は, 従来型よりも改良型のほうが高いと考えられた。
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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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