抄録
高齢者の歯周病の特徴を述べ, そのような高齢者患者への口腔清掃指導を難しくしている問題点とその対策にっき若干の解説を行った。高齢者の歯周病の特徴としては, 発症が青, 少年期で急速に進行する病型を経て徐々に成人型の歯周病に移行したものが殆んどであり, 重症型のものが多いこと, 齲蝕や欠損といったその他の歯科疾患が混在しているため病態を複雑にしていること, さらに全身的に進行性の慢性疾患を有していることが多い。加えて精神面の硬直化や肉体的な機能低下という避けがたい老化現象が高齢者にはみられ, それらが青, 壮年者への指導とは比較にならないむずかしさを与えているのである。したがって指導にあたっては, 問診に十分時間をとり, 相手をよく理解し, できるだけ相手に合わせた態度で接することが肝要である。技術指導も欲張らず, ワンポイントでしかもあせることなく根気よく, 繰り返し行うべきである。ブラッシングも始あから複雑なブラシの使いこなしを要求するのではなく, できるだけ単純化した方法を指導すべきである。また, 患者の視力や聴力にも気を配り, 照明を十分あてることや, 耳もとでゆっくり話すといったことが大切である。患者の口腔内に清掃を困難にしている充填物, 補綴物がある場合には, 清掃性のよいものに置き変えることも歯科医としての責務である。