老年歯科医学
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ポリプロピレングリコール配合義歯安定剤の臨床評価
渡辺 郁馬石山 直欣佐藤 雅志今村 嘉宜高江洲 義矩金子 憲司小沢 利之佐相 一夫渡辺 貴史荒木 博之
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1993 年 7 巻 2 号 p. 195-210

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抄録
義歯安定剤は不適合義歯を歯科医師に修理してもらうまでの間, 義歯使用者が暫間的に使用する医療用具である。市販されている義歯安定剤には密着タイプと粘着タイプの2種類がある。我国では密着タイプの義歯安定剤が主流であるが, このタイプの義歯安定剤は使用後に義歯床から剥しにくい, チューブから押出しにくいといった欠点があった。著者らはれらの欠点を改善するため, ポリプロピレングリコール (以下PPGと略す) を配合したPPG義歯安定剤の有用性を臨床試験により評価した。
総義歯使用者72名を対象としてPPG未配合の市販義歯安定剤との比較によるクロスオーバー二重盲検法で臨床試験を行った。
その結果, PPG義歯安定剤は対照とした市販義歯安定剤と同様, 優れた義歯の維持安定効果を示した。また, 主目的である使用性 (押出し易さ, 塗布し易さ, 義歯床からの剥し易さ) の改善については有意差 (P<0.01) をもって対照製剤よりも優れていることが確認された。さらに, 義歯床下粘膜の炎症の改善, 痛みの軽減にも有効であることが示唆された。一方, 安全性面ではPPG配合製剤および対照製剤にそれぞれ1例ずつ副作用が認められたが, いずれも粘膜の異変を伴わない刺激症状であり, 試験の中止により症状が消失する一過性の軽微なものであった。この結果, PPG義歯安定剤は有効性, 使用性, 安全性において有用であると結論された。
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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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