日本消化器がん検診学会雑誌
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原著
病院発見がんとの生存率の比較による腹部超音波検診の有効性の検討─胆嚢がん, 膵がん, 腎細胞がんについて─
小野 博美小野寺 博義手嶋 紀子近 京子大水 智恵渋谷 大助
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2017 年 55 巻 3 号 p. 359-367

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抄録

【目的】検診発見がんと病院発見がんの生存率を比較することにより, 腹部超音波検診の有効性評価を試みた。
【対象および方法】対象は宮城県対がん協会の腹部超音波検診で発見された胆嚢がん5例, 膵がん5例, 腎細胞がん37例である。予後は宮城県地域がん登録と照合して調査した。対照として宮城県立がんセンターの胆嚢がん105例, 膵がん303例, 腎細胞がん294例を用いた。予後は院内がん登録のデータと照合した。Kaplan-Meier法にて実測生存率を求めた。
【結果】胆嚢がんの5年, 10年生存率は検診発見群で60.0%, 60.0%, 病院発見群では13.6%, 11.7%で有意差があった。膵がんの5年生存率は検診群で20.0%で病院発見群の2.9%より良好であったが, 有意差はなかった。腎細胞がんの5年, 10年生存率は検診発見群で100.0%, 94.1%, 病院発見群では63.1%, 53.9%であり有意差があった。
【結論】検診発見がんの予後は病院発見がんの予後より良好であるが, 検診の有効性を確立するには至ってない。10年以上の長期生存例ではがん死を免れたともいえる。現時点では超音波検診を継続実施し, 症例を蓄積してエビデンスを求めていく必要がある。

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© 2017 一般社団法人 日本消化器がん検診学会
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