日本消化器がん検診学会雑誌
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最新号
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巻頭言
特集:ピロリ陰性(除菌後、未感染)時代における胃がん検診のあり方
  • 渡 二郎, 吉村 理江, 山道 信毅
    2025 年 63 巻 4 号 p. 506
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/15
    ジャーナル 認証あり
  • 濱島 ちさと
    2025 年 63 巻 4 号 p. 507-513
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/15
    ジャーナル 認証あり

    リスク層別化は, 特定の疾病リスクを分類し, リスクに応じた検診や介入を行うことと定義される。リスク層別化は効率的に病変を検出すると共に, 将来の疾病発症を予測するモデルの機能もある。今後期待されるのは性別, 年齢だけではなく, 画像を含む臨床情報, 遺伝子, 生活習慣などの様々な情報を統合した予測モデルである。これらの結果は, リスクコミュケーション, 検診の効率化, 医療資源配分に応用できる。リスク層別化の導入に際しては科学的根拠を正しい方法で評価し, 利益不利益バランスを検討することが必須である。リスク層別化を公衆衛生プログラムとして実装するためには, 医療システム, 医療資源, 価値観(value/preference)を考慮し, プログラムとしての効果, 費用効果, 実現性, 受容性を検討し, 公平なアクセスを担保する必要がある。さらに, 受診者へ正しくリスク情報を伝え活用するための共同意思決定が重要となる。胃がんの疾病負担には世代間格差があり, これまでの一律提供は限界が来ている。若年世代には将来のリスク減少が課題であり, 高齢世代では胃がん検診の効率化を図るための実装可能なリスク層別化モデルの応用が望まれる。

  • 市田 親正, 石橋 史明, 草野 央, 石川 秀樹, 後藤田 卓志
    2025 年 63 巻 4 号 p. 514-523
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/15
    ジャーナル 認証あり

    胃がん検診として, ABC分類に基づく内視鏡検査と従来のバリウム検査の費用対効果を比較したGALAPAGOS studyを解説する。また, ヘリコバクター・ピロリ(以下, ピロリ)未感染者の増加を踏まえ, 今後の胃がん検診のあり方についても考察する。GALAPAGOS studyでは, ABC分類に基づく内視鏡検査(ABC-Endo)とバリウム検査(Ba-Endo)の費用対効果を比較するため, 1,206人を対象にランダム化比較試験を実施した。解析の結果, ABC-Endo群の総検査費用はBa-Endo群より高く, 現時点では従来のBa-Endo群が費用対効果に優れていることが示された。しかし, この結果はABC分類A群の割合により変動し, A群が50%以上を占める場合, ABC-Endo群の費用対効果が優る可能性も示された。日本ではピロリ未感染者の割合は世代が進むにつれて増加しており, 1990年生まれの世代では90%以上を占めることが推定される。ピロリ未感染者が胃がん検診の主な対象となる今後の日本では, 感染状況に応じた効率的な検診体制の構築が求められる。

  • 小和田 暁子
    2025 年 63 巻 4 号 p. 524-531
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/15
    ジャーナル 認証あり

    ピロリ菌感染は慢性胃炎を引き起こし, 胃がんの発症につながる。日本の胃がん原因の98%はピロリ菌感染である。ピロリ菌除菌治療は効果的な胃がんの一次予防である。日本では, ピロリ菌除菌治療が2000年に胃・十二指腸潰瘍患者に, さらに世界に先駆けて2013年にピロリ菌関連慢性胃炎患者に対して健康保険適用となった。それに伴い, ピロリ菌除菌者数は増加した。近年, 胃がん罹患数及び胃がん死亡数が減少してきたが, 日本はいまだ胃がんの多い国である。これまでの費用効果分析の研究から, ピロリ菌除菌治療を伴ったピロリ菌検診は, すべての年齢で内視鏡検診よりも医療費を削減して効果が高いこと, ピロリ菌除菌治療を実施する最適年齢は15歳から80歳のうちで最も若い15歳であること, ピロリ菌除菌成功後のフォローアップ内視鏡検査は費用対効果が高いことが明らかになった。来たるピロリ菌陰性時代に向けて胃がんを減らすためには, 日本の胃がん検診に, 限られた社会資源の中で最小の費用で最大の効果を得ることができるピロリ菌検診を早急に導入することが求められる。

  • 川合 紗世
    2025 年 63 巻 4 号 p. 532-538
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/15
    ジャーナル 認証あり

    日本における胃がんの長期累積罹患リスクはピロリ菌感染率の低下と除菌治療の進展により減少しているが, 感染者のリスクは依然として高い。ピロリ菌感染の有無による胃がん累積罹患リスクを推計した結果, 感染者の0~85歳までの累積罹患リスクは男性で約17%, 女性で約8%と高く, 非感染者では男性で約1%, 女性で0.5%程度と極めて低かった。

    年代別では, 40歳未満ではピロリ菌感染によらず累積罹患リスクが極めて低く, 50歳以上では感染者のみで大幅なリスク上昇が認められ, リスク層別化の必要性が示された。それと同時に現在の対策型検診が50歳以上を対象としている妥当性が裏付けられた。

    以上の結果から, 胃がん検診にはピロリ菌感染の有無や持続感染年数を考慮したリスク層別化が求められ, 将来的には個人のリスクに応じた精度の高い任意型検診への移行が必要であると思われる。

会長講演
原著
  • 青木 利佳, 安田 貢, 山道 信毅
    2025 年 63 巻 4 号 p. 547-559
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/15
    [早期公開] 公開日: 2025/06/04
    ジャーナル 認証あり

    【目的】自己免疫性胃炎(AIG)の胃X線像として, 高度萎縮や逆萎縮が知られているが, 我々はAIGの新規所見として「散在性粒状ポリープ」と「均一小多角形粘膜模様」を見出した。その意義を明らかにすることが目的である。

    【対象と方法】AIG 31例(40±76歳, 女性26例), 年齢と性を一致させたHelicobacter pylori(H. pylori)感染胃炎(HPG)31例, H. pylori未感染の正常胃 31例を対象に, 新規所見を含む9所見の頻度, ならびに診断能を比較検討した。

    【結果】AIGにおける頻度は, 散在性粒状ポリープ 58.1%, 均一小多角形粘膜模様 54.8%であり, HPGと正常胃に比較して高率であった(p<0.001)。AIGにおける感度, 特異度, 正診率は, 散在性粒状ポリープで各 58.1%, 100%, 79.0%であり, 均一小多角形粘膜模様で各 54.8%, 96.8%, 75.8%であった。高度萎縮, 逆萎縮, 固着粘液, 残存胃底腺(隆起型)もAIGで高率であった(各p<0.001)。

    【結語】散在性粒状ポリープと均一小多角形粘膜模様はAIGに特異性が高く, 診断に有用である。

  • 赤星 和也, 田村 慎一, 赤星 和明, 古賀 秀信, 大石 善丈
    2025 年 63 巻 4 号 p. 560-572
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/15
    [早期公開] 公開日: 2025/06/04
    ジャーナル 認証あり

    【目的】直視型ラジアル超音波内視鏡(Forward-viewing radial echoendoscope:FRE)はスコープを変えることなく超音波内視鏡検査(EUS)膵癌検診と上部消化管内視鏡検査(EGD)胃癌検診が可能である。目的はFREを用いた一回の内視鏡検査による膵癌胃癌検診(FRE膵癌胃癌検診)の有用性を腹部超音波(US)膵癌検診と比較し検討する事。

    【対象と方法】同日にUSとFRE膵癌胃癌検診を施行した当院検診受診者116例を対象とし後ろ向きに両検査の診断成績を比較検討した。

    【結果】全例FREを用いスコープを変えることなく安全にEUS膵癌検診とEGD胃癌検診が施行できた。FREの検査時間は平均19.5分。FREとUSの膵病変発見率は膵癌で1.7%と0.9%(p=1.000), 膵嚢胞性腫瘤で19.0%と0.9%(p<0.001)でFREが高かった。FREの胃癌発見率は, 0.9%であった。

    【結論】FRE膵癌胃癌検診は1回の内視鏡検査でEUSとEGDが安全に実施でき, USに比べて膵病変の発見に有用であることから, 膵癌胃癌検診の精度向上と普及につながる有望な方法と考えられる。

  • 千葉 祐子, 小松 廣匡
    2025 年 63 巻 4 号 p. 573-577
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/15
    [早期公開] 公開日: 2025/06/04
    ジャーナル 認証あり

    【目的】肝腫瘍性病変の特徴を示さない充実性病変を調査し, その特徴から超音波検査の精度向上を図る方法を検討する。

    【対象と方法】2021年度から2023年度に実施した腹部超音波検査のうち肝の充実性病変で精密検査となり, 肝血管腫であった34例の腫瘍径と内部エコーを調査した。

    【結果】34例の腫瘍径と内部エコーは, 15mm未満は10例で全てが低エコー, 15mm以上は24例で, 低エコー12例, 高低等無の混合エコー5例, 高エコー2例, 低+等エコー1例, 低+高エコー1例, 等+高エコー2例, 等+無エコー1例であり, 平均腫瘍径は33.8mm(7mm~110mm)であった。

    【結語】血管腫の組織学的な特徴から低エコーでは体位変換によるchameleon sign, 高エコーでは圧迫を用いたdisappearing sign, 混合エコーでは内部変化をとらえやすい低エコーおよび高エコー部分に着目した観察を行うことで, 肝血管腫の特徴を確実に捉え精度向上を図ることが可能だと考えられる。

編集後記/奥付
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