日本消化器がん検診学会雑誌
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巻頭言
総会長報告
特集:胃がんX線検査における継承すべき熟練技術
3) 所見拾い上げの達人
  • 西戸 伸之
    2026 年64 巻5 号 p. 786-800
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル 認証あり

    【背景と目的】胃がんX線検診における追加撮影とは,標準体位および規定撮影枚数内で胃粘膜領域が十分に描出されない場合に施される場合と異常所見の再現性を高めるために施される場合の2種類があり,病変の正確な描出と正確な網羅性を目的としている。しかし,その具体的手技や撮影法は撮影者の経験や知識に依存しており,技術レベルの差が課題となっている。本著では,胃形や検査状況に応じた追加撮影の手技とその必要性,ならびに追加撮影を要する判断基準の明確化を目的とした。

    【対象と方法】対象は,瀑状胃,牛角胃,前庭部後壁の屈曲などの胃形条件により追加撮影を要する症例,および大彎ひだの異常形成や前壁撮影困難例とした。さらに,異常所見を伴う症例に対し質的診断を目的とした追加撮影の有用性について,case studyにて解説した。

    【結果と結論】追加撮影を要する症例では,体位変換,適切な撮影体位の選択,圧迫法,呼吸調整,バリウム量の調整などを組み合わせた撮影手技が重要であった。また,バリウム流出,空気量の過不足,blind領域への対応についても症例ごとの工夫が求められた。これらを適切に実施することで,診断精度の向上が認められた。

  • 田内 慎一
    2026 年64 巻5 号 p. 801-813
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル 認証あり

    近年,胃部X線検査の読影医不足が顕在化する中,撮影技師が異常所見を拾い上げ,読影補助認定技師が適切にカテゴリー分類を提示する役割が重要となっている。本稿では,所見拾い上げのプロセスを「事前準備」「背景粘膜診断」「違和感の検出」「カテゴリー5の判断」の4Stepに整理し,カテゴリー分類の具体例を通じてその実践的意義を示す。背景粘膜診断では,単なるピロリ菌感染の有無だけでなく,萎縮の程度や腸上皮化生,肥厚性胃炎,鳥肌胃炎などの特異的所見を評価することで,胃がんリスクをより詳細に把握できる。特に胃がん高リスク者では,透視観察や撮影手技の工夫により,わずかな異常所見に対する感度を高め,カテゴリー分類の精度向上につなげることが可能となる。また読影補助認定技師は,適切なカテゴリーを基に要精検者を精密検査受診へつなぐ橋渡し役としても重要であり,検診精度の向上に寄与する。これらの取り組みは,胃がんの早期発見に直結し,診療放射線技師の技量が検診の質を左右することを示している。

  • 髙橋 伸之
    2026 年64 巻5 号 p. 814-828
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル 認証あり

    胃部バリウム検査では,胃の全域を網羅し撮影できても病変を認識できないことが少なくない。それは,主に造影効果不足のために描出されないのであるが,検診の場では,十分な造影効果が得られるケースばかりではないのが現状である。その状況でも,救命可能な癌の拾い上げを完遂することが使命と認識している。そのためには,撮影時の観察力を高めるしかない。観察力を高めれば,例え造影効果不足であっても,撮影時に微細ながらも異常所見として拾い上げることが期待できる。ここでは,拾い上げるべき具体的な所見を提示し,その後の追加撮影で胃癌の発見に至った症例を紹介する。また,それらの提示する所見を見逃し,適切な追加撮影をおこなわなければ,ルーチン画像には描出されず,胃癌を見逃す危険性が高いことを念頭に置いて,観察力向上に取り組んでいただきたい。

4) 圧迫撮影の真髄
  • 石黒 徹也, 本田 亘
    2026 年64 巻5 号 p. 829-841
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル 認証あり

    【目的】上部消化管X線検査(以下,UGI)における撮影法は,2009年の基準撮影法の普及により標準化が進んだが,圧迫撮影は依然として撮影者の技術や装置設定に依存する部分が多い。本総説では,従来の立位圧迫先行法(名大方式)の課題を整理し,圧迫撮影に適した条件の設定,および二重造影と圧迫技術を融合させた手技の有用性を定量的に検討することを目的とする。

    【対象と方法】当院のDR装置を用い,二重造影用階調処理(LUT10)と圧迫専用(LUT1)の特性を比較検討した。また動的な圧迫手技(襞の伸展,胃の挙上・押し下げ等)の診断能を解析した。

    【結果】圧迫専用LUTの採用により画素値の飽和(白とび)が解消され,粘膜模様の視認性が向上した。二重造影での圧迫併用により,二重造影単独では判定困難な重なり領域の70.6%で病変の除外・描出が可能であった。

    【結語】基準撮影法の中に,デジタル工学的最適化と動的な圧迫手技を統合することで,診断精度の向上が可能である。本知見は胃がん検診の精度維持に寄与するものである。

  • 鵜沼 清仁, 輿水 創太, 竹内 信行, 吉田 貴浩, 高倉 徹也, 倉内 克憲, 田中 靖
    2026 年64 巻5 号 p. 842-851
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル 認証あり

    胃X線検査で前壁撮影を行う際,胃形が横胃の場合では良好な描出範囲が得られない場合が多い。当施設では2022年4月より,形態の違う2つの圧迫用フトンを組み合わせて使用することで,前年までと比較して横胃の二重造影で描出範囲が改善した。これはフトンを組み合わせることで,胃形を矯正できる厚みがあるフトンを使用しても患者に苦痛を与えることなく前壁撮影を行うことができたことが改善した要因の一つと思われた。また,二重造影の補助的な撮影法の1つとして,圧迫用フトンを用いた腹臥位圧迫撮影が病変描出に有効であった症例を用いて解説した。

原著
  • 佐藤 真由美, 淺沼 清孝, 面川 奈津子, 盛田 美樹, 千葉 隆士, 加藤 勝章
    2026 年64 巻5 号 p. 852-864
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル 認証あり

    【背景】近年,対策型胃X線検診の受診者が高齢化しており,これらは便排泄遅延に伴う偶発症の高リスク群であることから,バリウムのスムーズな排泄を促進することは重要である。これまで宮城県対がん協会では下剤入りバリウムの使用と錠剤下剤の配布を行ってきたが,加えて2023年度より還元難消化性デキストリン配合飲料水(プロジェクトF,500 mL;以下デキストリン水)の配布を開始した。

    【対象と方法】対象は2019年度から2024年度に当協会実施の対策型胃X線検診受診者751,579人で,検診後に寄せられた電話相談件数を解析した。

    【結果】デキストリン水配布前(2019−2022年度)の電話相談件数は受診者1万人あたり20人であったが,配布後(2023−2024年度)は9人,オッズ比0.44(95% CI,0.38−0.51)と減少した。この効果は性別や年齢,実施年度で調整したが独立して認められ,さらに排便困難に関する相談件数の減少が相談件数全体の減少に大きく関与した。

    【結語】デキストリン水の配布は胃X線検診後の便泄困難を軽減する公衆衛生的介入であることが示唆された。

  • 久保田 憲宏, 村田 宗二, 小野寺 健, 釜沢 政慶, 一方井 正宏, 金濱 雄悦, 女鹿 隆徳
    2026 年64 巻5 号 p. 865-872
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル 認証あり

    【目的】鎮痙剤投与の有無が大腸CT検査(CT colonography:以下CTC)の腸管拡張に及ぼす影響を評価検討した。

    【方法】2021年4月1日から2024年3月31日までに便潜血検査陽性の二次検査を目的とし当施設でCTCを実施した774名を鎮痙剤投与群590名と鎮痙剤非投与群184名に分類し,対象の背臥位撮影像から得られた仮想注腸像を部位ごとに区分して拡張の度合いでスコア化して評価し,鎮痙剤投与群と非投与群で比較した。

    【結果】盲腸の評価は投与群と非投与群で同程度であったが,その他の部位は投与群が非投与群より腸管拡張が良好で有意な差を認めた。

    【結語】鎮痙剤投与の有無は腸管拡張の影響因子と考えられた。

経験
  • 前北 隆雄, 井口 幹崇, 吉田 岳市, 瀧 真也, 桑島 史明, 木下 淳, 高尾 政輝, 向井 陽祐, 和田 梓, 北野 雅之
    2026 年64 巻5 号 p. 873-881
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル 認証あり

    【背景】食道がんの検診は事実上胃がん検診の一部分として実施されてきた。内視鏡検診が導入され食道がん発見増加が期待される一方,精度管理として内視鏡画像のダブルチェックが求められている。本検討の目的は,内視鏡検診とダブルチェックが食道がん発見に及ぼす影響を明らかにすることである。また最近利用可能となった内視鏡AIの使用経験を踏まえ検査時間や内視鏡医の評価もあわせて報告する。

    【(検討1)対象と方法】2011年から2022年まで和歌山市の対策型胃がん検診受診者48,719人を対象に食道がん発見率を調査した。

    【結果】内視鏡検診での食道がん発見率は,同時期に行われたX線検診と比べ有意に高かった。内視鏡検診においてダブルチェック導入後の食道がん発見率は,導入前と比べ有意に高かった。

    【(検討2)対象と方法】上部消化管内視鏡AIを導入直後の時期に内視鏡AIを使用した20例と導入前20例の検査時間を調査,施行医10名にアンケート調査を実施した。

    【結果】内視鏡AI導入前後で検査時間に有意差を認めなかった。内視鏡AIは概ね好意的に評価された。

    【結語】内視鏡検診とダブルチェックは食道がん発見増加に寄与する可能性がある。

  • 馬嶋 健一郎, 藤原 正則, 村木 洋介
    2026 年64 巻5 号 p. 882-894
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル 認証あり

    【背景】回盲弁は大腸CT検査において偽陰性や偽陽性が起きやすい弱点領域であるが,これを補う研究は不足している。回盲弁の特徴を分析し,症例を提示することで回盲弁読影の助けとする。

    【対象と方法】任意型の大腸CT検診受診者94名,2体位の合計188個の回盲弁において正常回盲弁の形態などの特徴,内部densityの見え方について分析した。

    【結果】回盲弁の形態は53%が膨隆型で,膨隆型のサイズ平均値は20.7mm,最大33.0mmであった。不自然に隆起した部分など形態不整や非対称性がある症例が18%に認められた。MPR像のdensityの見え方は,低吸収と高吸収域が様々な程度で入り混じっているものが88%であり,高吸収域に見える回盲弁は2.1%と少なく,2体位目では認められなかった。

    【結語】正常回盲弁は低吸収域であることが病変との鑑別の助けになるが,低吸収域の混じる程度は様々な幅がある。回盲弁の形態は非常にバリエーションに富んでいることを認識し,正常回盲弁の特徴を知っておくことが適切な読影につながる。

調査報告
  • 西川 孝, 田中 努, 小田 丈二
    2026 年64 巻5 号 p. 895-902
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル 認証あり

    【目的】日本消化器がん検診学会(旧名:日本消化器集団検診学会)が胃がん検診専門技師認定制度を設けたのは2001年,上位資格となる読影補助認定制度は2019年に設置された。設置目的は胃がんX線検診の精度向上である。今回胃がん検診専門技師と読影補助認定技師の現状,並びに第10回胃がん検診専門技師研修会の受講状況について検証した。

    【対象】2025年10月1日現在,本学会に登録されている診療放射線技師会員,胃がん検診専門技師,読影補助認定技師,第10回胃がん検診専門技師研修会受講者を対象とした。

    【結果】本学会における診療放射線技師会員数は5,850名,胃がん検診専門技師は3,533名(取得率60.4%),取得率に支部間格差は無く,読影補助認定技師は832名(取得率23.5%),第10回胃がん検診専門技師研修会受講者は1,142名(受講率32.3%)で支部間格差を認めた。

    【結語】これらの認定は,胃がんX線検診の精度向上を目的に設置された制度であるが,現状では認定者のマン・パワー不足が危惧され,各支部間格差を解消すると共に認定取得率の増加が期待された。

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