日本消化器がん検診学会雑誌
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巻頭言
特集:大腸がん死亡率減少に向けた効果的な検診戦略
  • 松田 尚久, 三上 達也, 間部 克裕, 盛一 健太郎, 小林 望, 只野 敏浩
    2025 年63 巻6 号 p. 980
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/15
    ジャーナル 認証あり
  • 吉川 裕之
    2025 年63 巻6 号 p. 981-990
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/15
    ジャーナル 認証あり

    免疫便潜血検査(免疫法)は大腸がん死亡率の減少効果が科学的に証明され, 利益が不利益を上回ることから, 対策型検診および任意型検診での実施が推奨されている。日本では1992年から免疫法による大腸がん検診が開始され, 1990年代後半から年齢調整死亡率は減少しているが, 免疫法による大腸がん検診を実施している諸外国と比較するとその減少効果は充分ではない。

    国民生活基礎調査によると, 勤め先で大腸がん検診を受けた人(40-69歳)の割合は49.1%と高い。法定外健診項目として実施される職域がん検診では, 事業者や保険者が福利厚生を目的に任意で実施している。職域の実態を継続的に把握できる仕組みはなく, また指針とは異なる方法や運用も見られ, 精度管理は不十分である。

    従って, 大腸がん検診における免疫法の有効性を高め, 不利益を最小化するためには, 職域検診も含めた組織型検診の導入が不可欠である。検診の実施形態に関わらず, 個人単位での受診状況の包括的な把握と質の高い精度管理が可能な検診プログラムの構築が望まれる。

  • 小林 望
    2025 年63 巻6 号 p. 991-1001
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/15
    ジャーナル 認証あり

    1992年に始まった免疫便潜血検査2日法を用いた大腸がん検診は十分な効果を発揮できていない可能性が指摘されており, より効果的な大腸がんへの対策として大腸内視鏡検査を対策型検診に導入する議論が活発になっている。その有効性に関しては, 多数の症例対照研究やコホート研究で証明されているものの, ランダム化比較試験での検証は進行中である。すでに対策型大腸内視鏡検診を導入しているドイツでは, 便潜血検査との選択式で, 10年間隔で最大で2回の大腸内視鏡検査を受けることができるが, その精度管理にも注意が払われており, 年間の受診率は2-3%に留まるものの, 大腸がん罹患・死亡の減少に大きく貢献していることが報告されている。一方ポーランドでは, 大腸内視鏡検査単独での検診を導入したために, その受容性の低さとアクセスの悪さから十分な成果につながっておらず, 追加の対策に追われている。日本で大腸内視鏡検診を導入するためには, 死亡率減少効果の検証はもちろん重要だが, 「大腸内視鏡検診を正しく遂行できるような精緻かつ強固な検診システム」が必要であり, 組織型検診の導入など, がん検診の体制強化と並行して議論する必要がある。

  • 松本 啓志, 大澤 元保, 村尾 高久
    2025 年63 巻6 号 p. 1002-1007
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/15
    ジャーナル 認証あり

    日本における大腸がん検診では, 便潜血陽性者に対する精密検査として大腸内視鏡検査が標準であるが, 受診率の低さや医師の負担が課題である。大腸CT検査は, 低侵襲かつ前処置が比較的容易である点から, 代替手段として期待されている。近年, 前処置の改良, 診療放射線技師によるタスクシフトの進展, AIの読影支援技術, プロトコールの標準化など, 普及促進のための整備が進められている。さらに, 被曝線量の低減や平坦病変検出精度の向上も課題として取り組まれている。大腸CT検査は今後, 便潜血検査や内視鏡検査と連携した効率的な検診体制の構築に寄与し, 日本の大腸がん死亡率の低下に貢献する可能性がある。

  • 三澤 将史, 工藤 進英
    2025 年63 巻6 号 p. 1008-1016
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/15
    ジャーナル 認証あり

    大腸内視鏡検査における新技術, 特に人工知能(AI)の進展と検診への応用可能性について概説する。従来の大腸内視鏡検査では病変の見落とし(約25%), 診断精度の問題, 検査の質のばらつきといった課題があった。これらを解決する新技術として, ディープラーニングを基盤とするAIシステムが開発されている。病変検出支援システム(CADe)は複数の製品が実用化され, 検診における腺腫検出率の向上(約10%)や見落とし率の大幅低減(35.3%から16.1%)に寄与することが示されている。診断支援システム(CADx)も進化し, 検診で発見される小病変の腫瘍・非腫瘍の鑑別や深達度診断が可能になりつつある。さらに検査の質向上支援(CAQ)技術により, 検診における死角の少ない検査誘導や盲腸到達確認も実現している。こうした新技術の検診への応用は, 大腸癌の早期発見率向上と検診の質の標準化に貢献する可能性があるが, 長期的な大腸癌死亡・罹患抑制効果については今後の大規模研究による検証が必要である。

  • 細野 覚代, 酒巻(山﨑) 恭子, 齋藤 洋子
    2025 年63 巻6 号 p. 1017-1025
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/15
    ジャーナル 認証あり

    便潜血検査免疫法(以下免疫法)は「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン2024年度版」において推奨グレードAと評価されたが, 国内では検査キットやカットオフ値の多様性, 精密検査受診率の低さなどの課題が残る。本稿では免疫法を用いた大腸がん検診の有効性や運用上の課題, 受診率向上に向けた対策を概観した。大腸がん死亡率減少に向けた効果的な戦略として, 海外におけるカットオフ値の柔軟な設定や, 便中ヘモグロビン濃度を用いたリスク層別化の試みを紹介した。郵送法による検体回収は受診率向上が期待される一方, 季節による精度への影響や検査キット改良の必要性なども指摘されている。国内の取り組みとして, 茨城県水戸市で実施された介入研究を紹介した。がん検診未受診者に郵送法とナースナビゲーションを提供した結果, 精検受診率は水戸市の精検受診率を上回り, 受診支援の有効性が改めて示唆された。今後, 免疫法による大腸がん検診の有効性を高めるためには, 精度管理と受診支援を含めた包括的な取り組みが必要である。

理事長講演
  • 大西 洋英
    2025 年63 巻6 号 p. 1026-1035
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/15
    [早期公開] 公開日: 2025/09/20
    ジャーナル 認証あり

    本稿は第62回日本消化器がん検診学会大会(JDDW2024)における理事長講演を基に, 本学会の新たな取り組みの紹介と, 消化器がん検診の課題とその対応についての私見を纏めたものである。消化器がん検診学は, 検診を実施する臨床医学, 新たながん検診に資するためのバイオマーカーの開発などに挑む基礎医学だけでなく, 地域にて実施される検診体制の構築ならびにその精度管理などの社会医学の分野も包含しており, この社会医学的要素は消化器がん検診学が他の消化器関連医学と様相を異にする点であり, かつ学問的体系として重要な視点であると考えられる。この社会医学をも包含する消化器がん検診学における研究の推進・発展に寄与すべく, 日本消化器がん検診学会は新たにがん検診情報・研究推進室を設置し, 学会員が実施する研究に対してのアドバイスなどを実施している。また, 対策型検診の対象となっているにも拘らず, 胃がんに比べ粗死亡率および年齢調整死亡率の年次推移において顕著な減少傾向が認められない大腸がんに対する検診の課題と学会が取るべきその対応策についての私見も紹介する。

総説
  • 花田 敬士, 清水 晃典
    2025 年63 巻6 号 p. 1036-1044
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/15
    ジャーナル 認証あり

    膵癌は早期診断が困難で5年生存率は低率である。また対策型検診が整備されておらず, 標準的なスクリーニング法が確立されていない。一方, 日本膵臓学会から2006年に膵癌診療ガイドラインが発刊され, 膵癌の危険因子が発出された。近年, 一部の地域から危険因子に着目し, 地域医療圏で様々な連携体制を整えた膵癌早期診断プロジェクトが実施されており, 早期診断例の増加, 外科的切除率の改善, 5年生存率の改善などが報告されている。今後, 国内での膵癌早期診断を達成するには, 危険因子に着目した“膵癌検診”の社会実装化に向けた検討が必要不可欠であるが, 診断に繋がる真の危険因子(糖尿病, 家族歴, 慢性膵炎, 膵管乳頭粘液性腫瘍, 喫煙など)の遡求, 腹部超音波での膵管拡張・狭窄, 膵嚢胞, CTでの限局的膵萎縮など間接所見および診断契機因子所見の理解, 超音波内視鏡(EUS), 十二指腸鏡などを用いた微小膵癌の確定病理診断法, 間接所見を有する場合の経過観察法の確立, 検診社会実装化に向けた新規腫瘍マーカーの開発, 上部消化管内視鏡を施行中に併用可能な, 十二指腸液中の蛋白, 遺伝子異常に着目したキット化に向けた研究の進捗などが期待される。

原著
  • 馬嶋 健一郎, 島本 武嗣, 村木 洋介
    2025 年63 巻6 号 p. 1045-1055
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/15
    [早期公開] 公開日: 2025/09/20
    ジャーナル 認証あり

    【背景】安楽に上部消化管内視鏡を行うことは重要であり, 任意型検診においては鎮静剤や鎮痛剤を投与する場合がある。この薬剤選択肢のひとつにペチジン塩酸塩単剤投与があり, その有用性が示されているが, 有害事象として気分不良を起こすことがある。このペチジン塩酸塩の副作用についての研究は欠落しており, 本研究はペチジン塩酸塩投与下での気分不良発生要因を分析する。

    【対象と方法】上部消化管内視鏡検診においてペチジン塩酸塩単独投与の者を対象とした。気分不良関連副作用の定義は, 悪心, 嘔吐, ふらつき・めまい, 血圧低下症状のいずれかもしくは複数の症状が出現したことにより検査後の安静時間(30分)を延長した者とした。

    【結果】対象者は3,004名。気分不良関連副作用は142名(4.7%)にみられ, その発症要因はロジスティック回帰分析において, 非飲酒者, 非喫煙者, 検査前血圧が低い, 検査苦痛度が高い, ブチルスコポラミン臭化物投与なし, 体重あたりのペチジン塩酸塩投与量増加であった。体重あたりのペチジン塩酸塩量至適カットオフ値は0.513mg/kgだった。

    【結論】ペチジン塩酸塩による気分不良発生要因を考慮したうえ, 投与量を調整することが副作用回避に役立つと考える。

調査報告
  • 村上 晶彦, 神谷 亮一, 中居 賢司, 三田 享子, 永井 謙一, 齊藤 裕美, 菅原 将人, 佐藤 絵理, 広田 唯美, 石田 由貴, ...
    2025 年63 巻6 号 p. 1056-1066
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/15
    [早期公開] 公開日: 2025/09/20
    ジャーナル 認証あり

    胃がん検診の場で, 問診と画像診断からHelicobacter pylori(以下H.pylori)現感染で未除菌者が疑われる受診者については, 除菌を強く促すように積極的なH.pylori除菌誘導を行った。X線検査45,973名中, 除菌勧奨紹介状は2,314例発行し, 返書は919例と少なく, うちH.pylori除菌成功例は535例(58.2%)であった。しかしこの中に5例の早期胃がんが発見された。内視鏡検査3,745例では, H.pylori現感染を推察し紹介状による除菌勧奨例は169例で, 返書があったのは127例であった。うち除菌成功は99例(78.0%)でX線検査より返事率, 除菌成功率が有意に高かった(P<0.01)。

    費用の面からABC検診と併用ができない胃がん検診の場合, 年齢にかかわらずH.pylori感染性胃炎を重視してこれを的確に診断し, 胃がん発見だけでなく, H.pylori未除菌者に対し除菌を強く促すことは必要であり, 今後の効率の良い胃がん検診をする上でも重要なポイントと考えた。

有賀記念学会賞受賞者の声
学術奨励賞受賞者の声
COI開示に関する訂正とお詫び
編集後記/奥付
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