2020 年 58 巻 6 号 p. 1015-1024
3年以内に当センターで全大腸内視鏡検査(以下,TCS)歴がある進行癌を「経年発見進行癌」と定義し,その特徴を解析し,大腸内視鏡検査の精度向上を目的として検討を行った。2010年4月から2018年3月の8年間に当センターで施行したTCS43,852件のうち,全悪性腫瘍発見数は3,020例で,このうち経年発見進行癌は19例(0.6%)であった。盲腸や上行結腸などの高い半月ヒダの裏や屈曲部,憩室による伸展不良部位に多く,これらはTCSでの観察不良部位と考えられた。その他,前処置不良による偽陰性症例や大腸術後の術式把握不足,憩室内発生,ポリープ癌化などの症例が存在した。大腸がん検診の二次精密検査であるTCSの精度向上に向けて,観察不良部位を念頭においた検査の工夫を行うことは重要である。