1987年より腹部超音波検診を地域総合検診の形で導入し, 今回1997年までの11年間の成績を基に超音波検診の現状ならびに有効性について検討を行つた。肝胆膵癌よりは腎癌, 膀胱癌において2次予防による予後改善効果が確認され, 腹部超音波検診は腹部多臓器を対象とすることにより発見率ならびに予後改善効果ともに効率的な検診に成り得ると考えた。一方, 見誤り例や見落とし例の存在より検者の技術能力の向上やダブルチェック体制の見直し, 一日の受検者数の調整など人的能力を考えた検診計画の導入, 体表近くの走査に対する5MHz探触子や年々進歩する診断装置の早期導入等の必要性が認められた。また, 精検ならびに事後管理の現状からは精検指示基準の厳守, 精検機関の選択, 精検結果に対する管理体制の見直しが必要と判断された。これらの点に改善を加えることにより, 今後腹部超音波検診の有効的な発展が期待された。