2003 年 41 巻 6 号 p. 537-545
科学的視点とは, 当該事象を論理的に, かつ合理的に分析・評価することで, がん検診の目的と目標にてらして, 理に適っているかどうかをみるものである。日本では特にそうであるが, 世界中の多くの国では, 近年の医療費の増大を大きな問題としている。最新の医療技術を採用すべきかどうかは, 限られた資源の合理的な有効利用と適切配分, 新技術によって得られると期待される保健と医療の質の向上のために, 医療技術の注意深いしかも科学的な評価は不可欠であると考えるようになった。わが国におけるがん検診の今後の展望を考えるとき, この科学的視点は欠かせない。公的費用を使うにしろ, 個人負担になるにせよ, 国民は, がん検診に関する情報開示と説明責任を求めることは必定である。そのときにこそ, 科学的根拠に基づいた論理, 証拠, コストパフォーマンスが求められる。本学会の責任は, それらに答えるような研究成果をどう積み上げるかに掛かっている。