日本消化器集団検診学会雑誌
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第42回日本消化器集団検診学会総会会長講演
胃がん撲滅へ向けて-25年間のがん検診のあゆみ
磨伊 正義
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2003 年 41 巻 6 号 p. 546-559

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抄録

昭和50年初頭, 検診事業の体系化と精度管理向上をめざして石川県対がん協会 (現, 石川県成人病予防センター) は, 県内の専門家から成る胃読影委員会を発足させ, 撮影方法, バリウムの選択, 濃度, 読影基準, 予後追跡調査, など検診の核になる基本線を確認し, 県内の統一をはかった。その結果, 昭和61年から平成13年の13年間に延べ人数54万人の検診を行ない, 発見胃がん数は947人に達し, 発見率も0.246-0.170%, 平均0.170%で, 早期がん比率も前半の56.2%から66.8%, 平成12年度には 81.8%に達した。石川県では10年前より県費による「がん検診診断精度強化事業」が推進されており, 更なる診断精度向上を図ってきた。その中で逐年検診により発見された進行胃がんの中には集検間隔の1年をすりぬける症例があり, それが発育速度が速く, 予後も悪い。いわゆる生物学的悪性度の高い胃がんが全体の5%程度存在し, 検診の大きな隘路となっていることを指摘してきた。一方, 都市部の車検診は受診率の低迷に悩んでいるのも事実であり, 金沢市でも以前は1%台と低迷していた。この受診率アップのため平成4年から金沢市医師会は, 金沢市の委託事業として各医療機関での直接撮影による個別検診をスタートさせた。この個別検診は地域住民への利便性をもつ反面, 実施施設間の撮影精度の格差は否めない。読影には一次医療機関の医師, 専門医 (学会認定医) による二次読影, 本学会指導医による最終レフリー (三次読影) を行ってきた。平成5年より平成13年までの9年間の総受診者は73,835人 (受診率14.4%), 要精検率5.6%, 精検受診率88.5%で発見がんは171例 (がん発見率0.23%), 早期がん比率は53.8%であった。今後の課題としては検診医療機関の教育, 早期胃がん比率の上昇, ペプシノゲンの導入, 一次検診へ内視鏡の導入など, 現在試験的に施行中である。

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