2005 年 43 巻 5 号 p. 520-527
胃がん集団検診において, 受診者の被曝線量を低減することは極めて大切である。今回, 含鉛アクリルを素材とする被曝低減フィルタを3種類製作し, X線被曝線量低減について評価を行った。評価内容は, 照射線量と深部線量の低減率を計測し, 胃画像濃度を比較した。さらにX線写真のフィルタ陰影の目立ち度評価とフィルタ陰影が診断領域に入る割合を検討した。その結果, フィルタ使用した場合の照射線量低減率は14.30%, 14.30%, 21.40%であり, 深部線量低減率は4.95%, 7.06%, 9.34%であった。胃画像濃度は視覚的に濃度差が無かった。胃X線写真のフィルタ陰影の目立ち度評価は, 1/2厚被曝低減フィルタが一番目立たなかった。胃X線写真でフィルタ陰影が診断領域に入る割合は, 473画像中332画像 (70.2%) であった。以上により, 被曝低減フィルタは臨床の場に導入可能な有効な方法であると確認した。また, 検討した3種類の被曝低減フィルタの特性を生かして, 胃がん検診対象集団の特徴 (年齢, 性別など) を考慮に入れ使い分けることがより有効であると考える。