日本婦人科腫瘍学会雑誌
Online ISSN : 2436-8156
Print ISSN : 1347-8559
シンポジウム5
プラズマ活性化溶液を用いた難治性腹膜播種に対する新規治療
芳川 修久中村 香江梶山 広明
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 40 巻 3 号 p. 151-158

詳細
抄録

腹膜播種の予後改善には,化学療法抵抗性の獲得と病変の完全切除の高いハードル等の克服が不可欠である.我々はこれまでに,本学工学部等と連携して低温大気圧プラズマを用いてプラズマ活性化溶液を作成し,これを婦人科悪性腫瘍の制御に応用する試みを行ってきた.この中で,プラズマ活性化溶液の卵巣癌に対する増殖・浸潤・遊走といった転移形質の抑制効果は高く,そのメカニズムとしてMAPKパスウェイを介したMMP発現抑制を確認した.また,in vivo イメージングを用いた卵巣癌マウスモデルを用いて検討した結果,プラズマ活性化溶液は腫瘍へのマクロファージの浸潤を誘導すること,特にiNOSの発現を伴うM1型マクロファージを誘導することが確認された.この知見は,プラズマ活性化溶液の抗腫瘍効果を説明する新規のメカニズムである.最後に,早期卵巣癌を模したマウスモデルに対するプラズマ活性化溶液による腹腔内還流治療の有効性を検証し,全生存率を有意に改善した.これらの結果から,プラズマ活性化溶液の腹膜播種に対する有用性と制御メカニズムの一端が明らかとなり,将来の臨床応用へと期待される.

著者関連情報
© 2022 日本婦人科腫瘍学会
前の記事 次の記事
feedback
Top