日本婦人科腫瘍学会雑誌
Online ISSN : 2436-8156
Print ISSN : 1347-8559
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総説
  • 豊田 進司
    2026 年44 巻3 号 p. 187-195
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー

    概要:2024年4月より本邦においてHPV検査単独法が導入され,子宮頸がん検診における確定診断としてのコルポスコピーの役割は大きな転換期を迎えている.一方,従来のコルポスコピーは主観性が高く,診断精度,品質保証,教育体制の標準化が長年の課題であった.こうした背景のもと,International Federation for Cervical Pathology and Colposcopy(IFCPC)は2011年バルセロナ用語以来の大規模改訂となる新国際標準「IFCPC2026」を策定中であり,扁平上皮病変に加えて腺系病変の体系的評価や,ルゴール染色を基盤とした病変分布の空間的把握(マッピング)概念の再定義が盛り込まれる見込みである.本総説ではIFCPC2026を軸に,Swedeスコアによる定量的評価,国際品質保証指標との整合性,ならびにWeb教育と国際認定制度を活用した新たな教育体制の意義を概説し,HPV検査単独法時代に求められる次世代コルポスコピーの方向性を展望する.診断精度,品質保証,研修システムの標準化は,日本全国で一貫した臨床基準を確立するのに役立ち,一次HPV検査時代における次世代子宮頸がん検診の基盤を提供する.

原著
  • 黒田 亮介, 堀川 直城, 石坂 幸雄, 福田 真優, 深江 郁, 小山 貴, 福原 健
    2026 年44 巻3 号 p. 196-202
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー

    概要:進行卵巣癌では,治療方針決定における病理組織診断や分子プロファイル評価のため,審査腹腔鏡での組織採取が広く実施されているが,全身麻酔を要し周術期リスクを伴う.当科では低侵襲な針生検を実施している.本研究では,その診断的有用性と安全性を審査腹腔鏡と比較し,分子検査および予後への影響を検討した.2021年1月から2023年12月までに術前化学療法後に腫瘍減量術を実施した進行卵巣癌21例を対象とし,針生検群(10例)と審査腹腔鏡群(11例)に分け,治療開始までの期間,合併症,腫瘍含有率,治療成績および予後を後方視的に解析した.病理組織診断は全例で可能であった.HRD検査の判定成功率は針生検群70%,審査腹腔鏡群91%であり,腫瘍含有率30%以上に限定した場合,針生検群の86%で実施可能であった.針生検群では重篤な合併症は認めず,二群間で無再発生存期間および全生存期間に有意差は認めなかった.針生検は進行卵巣癌症例において高い安全性を示し,病理組織診断およびHRD検査において審査腹腔鏡に劣らない有用性を示した.適切な症例選択により,診断精度や予後を損なうことなく,迅速な治療開始が可能となり得る.

症例報告
  • 劉 璟壬, 大原 樹, 石井 雅人, 今井 悠, 金森 玲, 遠藤 拓, 竹内 淳, 近藤 春裕, 久慈 志保, 戸澤 晃子, 鈴木 直
    2026 年44 巻3 号 p. 203-210
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー

    概要:今回我々はベバシズマブ併用化学療法中に心室内血栓および心不全を起こした症例を経験したので報告する.症例は55歳,3妊3産.MRI検査,FDG-PET/CT検査で腹膜播種性病変,左傍胸骨リンパ節への転移を疑った.審査腹腔鏡にて腹膜生検を施行し,高異型度漿液性癌であった.原発性腹膜癌IIIC,cT3cNxM0と診断し,術前化学療法としてベバシズマブ併用化学療法を4サイクル施行し,PRが得られた.インターバル腫瘍減量手術を施行し,腫瘍の完全摘出が可能であった.術後,維持化学療法44日目のCT検査にて右室内に33×8 mm大の陰影欠損を認め,心室内血栓と診断した.また,G4の駆出率減少,G3の左室収縮機能障害,G3の右室機能障害を認めた.入院管理とし,抗凝固療法,心不全の治療を開始した.治療開始より42日目の心エコーにて心室内血栓は消失し,駆出率は30%まで改善を認めた.ベバシズマブ併用化学療法中に心室内血栓を認めることは稀であるが,全身状態の悪化のため化学療法の継続が困難となることから早急な診断と治療開始が望まれる.

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