日本婦人科腫瘍学会雑誌
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シンポジウム5
医療開発促進のための逆行性アプローチによるTR実施と次世代PI育成
寺尾 泰久吉田 恵美子
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2023 年 41 巻 2 号 p. 155-160

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抄録

医学研究は「基礎研究」と「臨床応用を明確に目指す研究」に二分される.分子標的治療薬の開発促進に伴い,基礎研究に留まらず非臨床・臨床研究までの橋渡し研究(TR)へと医学研究は大きくパラダイムシフトした.

本研究は,臨床ニーズを探索することから開始し,子宮体癌術後のQOLを低下させる不要なリンパ節郭清の回避を目的として新規リンパ節転移診断法の確立を目指した.シーズを臨床応用することがTRの意義であるが,シーズ不足は大きな課題である.また,臨床導出における開発計画に精通した医師や研究者の育成も十分とは言えないのが現状である.本研究では,時間経過に伴う転移のリスクの最小化,リンパ節摘出を伴わない検査手法を主たる開発コンセプトとし,原発腫瘍組織中の核酸バイオマーカーの術中迅速定量によるリンパ節転移診断を目指した.このようにシーズとしてのバイオマーカー発見や迅速定量技術開発よりも出口戦略の明確化を先行させたことで,第一に基礎研究段階から次ステージへの臨床応用を見据えた円滑な移行,国際展開と企業導出に向けた戦略構築をアカデミア等と共同で進めることが可能となった.第二にこれらの全工程に若手研究者として参画することはTRにおける研究開発経験を積み,次世代PI育成としての意義も有する.以上より新たなTR手法として逆行性アプローチを提案する.

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© 2023 日本婦人科腫瘍学会
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