日本産科婦人科内視鏡学会雑誌
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長柄メスによる腹腔内細切とクリスクロス法
羽田 智則下村 優莉奈山田 泰平桝田 沙也加戸枝 満仙波 恵樹濱崎 京子安藤 正明
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2023 年 39 巻 1 号 p. 29

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抄録

 当院では腹腔鏡下子宮筋腫核出術において核出筋腫を経腟的に回収している。核出筋腫が大きい場合は経腟回収口から切開を加えるか、腹腔内で事前に筋腫を細切してから回収する方法をとっている。腹腔内での細切には長柄メスを使用している。長柄メスは変形ダイヤモンド配置の正中ポートを抜去し、23 cm長柄メスをポート創部から直接挿入する。メスの柄まで入れておくことが安定したメスさばきをする重要なポイントになる。直腸や仙骨前面を傷つけぬよう、可能な限り膀胱子宮窩でメスは背側から腹側への方向にのみ切開する(アップストロークテクニック)。左右のポートからクロー鉗子で腫瘍を把持牽引し、カメラは常にメス先を見せるように注意する。

 長柄メスで筋腫に直線的な切開を加えることで球形の筋腫を紐状に変形させる方法をクリスクロス法と名付けた。多くの筋腫は長短軸のある楕円状であり、クリスクロス法では3つのステップで筋腫に直線的な切開を加える。1)長軸に対して垂直に横切開を2-3cm間隔で、5分の4程度の深さで行うと筋腫はアコーディオン状になる。2)筋腫を半回転させて横切開の裏面を出し、長軸に沿って正中に5分の4程度の深さの縦切開を一本入れる。本切開の途中で横切開の切れ目が見え、本切開の終了時に切開面を左右に開くと漢字の“目”のような状態になる。3)最初に加えた横切開は左右でつながったままだが、そこに追加切開を互い違いに加えると、筋腫がジグザグの紐状になる。腹腔内での長柄メス使用とクリスクロス法により、球体の筋腫が紐状に変形し、腫瘍回収が容易になるという点で本法は有用な一法である。本動画では、腹腔内長柄メス挿入法と留意点、基本的なクリスクロス法、11 cm筋腫に対するクリスクロス法、臍12 mmポート回収のために行ったクリスクロス法を紹介する。

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