図学研究
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研究論文
『春日権現験記絵』 構図分析 ─描かれた建築表現の類型から─
佐藤 紀子
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キーワード: 造形論, 絵巻, 構図分析
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2016 年 50 巻 3 号 p. 3-

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抄録

 本論では,鎌倉時代に制作された絵巻のなかでも最高峰と称される『春日権現験記絵』の画面構成について考察する.絵巻に描かれた建物の表現は類似的であるという指摘がある.けれども,その類似性は,日本の伝統的な絵画空間の意匠であるともいえる.まず,建物の画面構成と鑑賞者の視線との関係について述べ,次に,同一の建物の類似的な構図ごとにグループ化した.その際,次のような条件を用いた. Ⅰ. 描かれた建物が同じ,Ⅱ. 奥行き表現の方向が同じ, Ⅲ. 建物を捉える視線の方向が同じ,である.  8つのグループに分類したのち,グループごとに描かれた建物の同一の部分の奥行き方向の斜線角度を計測した.類似的な構図に見える理由の一つとして,建物の奥行き表現の角度にあまり変化が見られないことが考えられる. 本研究では,描かれた建築物の画面上の配置に違いが認められることを示唆した.

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© 2016 日本図学会
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