図学研究
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研究論文
デ・キリコの望楼
─アルド・ロッシの「ムッジオの市庁舎」(1971-72)の設計プロセス─
片桐 悠自
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2021 年 55 巻 2 号 p. 13-20

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抄録
 本研究は,建築家アルド・ロッシの設計思想における画家ジョルジョ・デ・キリコの影響を追う.まず,ロッシの手記『青のノート』を通じ,1968-71年までのデ・キリコへの言及を抽出し,円錐台の〈塔〉に付随するモチーフを導出する.ここから,1972年1月25日の「ムッジオの市庁舎」(1971-72)のエスキース図を分析し,広場に計画されたデ・キリコの彫刻《考古学者たち》の引用の意図を論じる.「ムッジオの市庁舎」の円錐台は,同年の「ファニャーノ・オローナの小学校」のクーポラとの関連が見受けられる.つまり,ロッシがデ・キリコの絵画から学んだ円錐台の〈塔〉のイメージは,パースペクティブ上の遠景をなす“見られる塔”でありながら,“見る塔(望楼)”として,建築作品へと応用されたといえる.
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© 2021 日本図学会
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