図学研究
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ルネサンス初期の前遠近法的作図法
―マリアーノ・タッコラの『技術論』における図的表現―
奈尾 信英
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キーワード: 図学史, 西洋建築史, 遠近法
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2002 年 36 巻 2 号 p. 3-8

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抄録

本研究は, ルネサンス初期に活躍した芸術家兼技術者の一人マリアーノ・タッコラに着目し, 彼の『技術論』に描かれた図の表現方法を分析・考察し, さらに, 前遠近法的作図法の解明を行うものである.分析手順は, 以下に示す通りである. (1) 『技術論』に描かれたすべての図を比較し, その図的表現を考察する. (2) 『技術論』I-IIの73葉 [表] の階段図に焦点を当て, この図を描くために用いられた作図法を解明する.その考察の結果, 以下のような結論が導き出された. (1) タッコラは, 塔や建物を空間のどの場所に配置したとしても, 塔は遠近法風に, 建物は斜軸測投象風に描いていることがわかった. (2) タッコラは, 奥行き方向の距離の値が定められない前遠近法的作図法の理論を用いて, 階段図を作図していることがわかった.さらに, この階段図から判断して, タッコラが交友関係のあったブルネレスキの正統作図法を用いていない.

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