抄録
21世紀における急速な高齢化により、変形性関節症やリュウマチ等の治療のための整形外科分野における手術件数は年率で10%近い増加をしている。また、近年では若年層においても先天性、後天性の障害さらには、交通事故等災害による損傷を克服するために外科的手術によって生体関節から人工関節に置き換えるという方法が行われている。このような置き換えによって関節液を消失しさらには損傷部分以外の健全な部分まで除去する事になる。現在の手術では、全置換型の人工関節であるが、将来マイクロサジェリーによって生体に対する影響を少しでも減らす、損傷箇所のみを置換する人工関節の可能性が考えられる。その時の設計における基礎データを得ておく必要がある。その前に生体関節の機構や機能について検証ならびに評価を行い考察する事で、部分置換型人工関節の形体、機能について基礎データを得る事から将来CAD/CAM手法による人工関節の製作が可能となる。
本研究は、このような視点から行うので、従来の試行錯誤を繰返す事なく設計可能になる事が最終目標である。そこでまず生体関節そのもので、実験をする前に類似のモデル実験を行い軟骨に相当する弾性材料の摩擦、潤滑、負荷特性を検証し、弾性係数が小なる程負荷荷重が減少し、摩擦係数は増加し、負荷により膜厚は減少し静圧を加える事によって膜厚が増加するという従来の傾向を知る事ができた。さらに、弾性流体潤滑理論 (EHL) による解析ならびに考察を行った。