抄録
臨床指標を用いた多施設間比較による医療の質の保証や向上を図る前提として,臨床指標の定義やデータ算出方法の標準化を図って評価することが必要となる。本研究では,国立病院機構臨床評価指標計測マニュアルに従った指標値と医療の質指標ポータルサイトに掲載している「医療の質指標定義プール」の算出式から得た指標値を比較し,算出定義の相違による分母・分子の算出値への影響を検討し,臨床指標の有用性の向上に向けて検討すべき課題を明らかにした。
検証対象とした類似の名称・概念の6指標の指標値には有意差が認められた。分母の算出定義である傷病名の選択,適応基準,除外基準によって,指標値は影響を受けていた。診療のプロセスを評価する臨床指標は,ある母集団を抽出し,その集団に対して提供すべき医療が適切に提供されているかどうかを評価している。よって,近似した母集団を適切に抽出できる定義の設定が重要である。