2016 年 53 巻 4 号 p. 207-216
わが国の後期高齢者医療費の地域差は大きい。地域差は厚生損失を生じさせうるものであることから是正が各種政策により試みられている。とりわけ入院医療費の医療費地域差への寄与は大きく重要な診療項目である。入院医療費の地域差の要因に関する分析は蓄積しているものの,病床種別に行った研究はない。そこで本研究は,後期高齢者の入院医療費の地域差に医療費要素が与える影響を病床別に明らかにすることを目的とした。
地域差の所在については変動係数および最大最小比を求め,各要因の入院医療費地域差の説明力についてはマルチレベル分析を用い,Proportional changes in varianceにより評価を行った。調査に当たって使用したデータは,福岡県後期高齢者医療広域連合に請求されたレセプトデータおよび被保険者管理マスタである。なお,調査期間は平成22年度から平成26年度の5年間とした。
入院受診率の地域差は精神病床および療養病床において相対的に大きかった。いずれの病床における入院医療費の地域差も,受診率が8割程度説明することが明らかとなった。入院日数と1日あたり入院医療費については,療養病床および精神病床の地域差においては入院日数,DPC払い適用病床においては1日あたり入院医療費がよりよく説明するという異なる結果が認められた。