2020 年 57 巻 1 号 p. 28-37
施設管理上の安全面における問題を予知・予測する方法を探索するため,平成27年度に患者から投書された意見と同年度のインシデントレポートの集計結果を基にFMEAを行い,対策案立案を試みた。患者からの投書ではトイレ・病室・浴室に対して苦情や要望が多く,これら3か所で発生したインシデントレポートに基づいてFMEAを行った。結果,トイレでは便座から立ち上がる時と着衣時,特に身障者用トイレで便座から手洗い器あるいは車椅子への移動時に転倒しやすいこと,病室では端座位の状態から立ち上がる時およびベッド上から物品を取ろうと手を伸ばすときや身を乗り出すときに転倒・転落しやすいこと,浴室では脱衣所にて気分不良等で椅子から後方に転倒しやすいことが推測できた。本報告では,一般的な病院で入手可能なデータを活用してFMEAを行うことで,施設管理上,改善すべき点を把握し,設備上の対策案を考案できる可能性を示唆した。