民族衛生
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死因別にみた在胎期間別の周産期死亡率の推移について
牧野 茂徳
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1987 年 53 巻 2 号 p. 79-86

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抄録

 死因別にみた在胎期間別の周産期死亡率の推移について検討を行った.人口動態統計資料を用いて,1968年から1971年の4年間平均と1975年から1978年の4年間平均の死因別,在胎期間別の周産期死亡率を観察した.死因は20項目に分類し,在胎期間は32週未満,32~35週,36週以上とした. 周産期死亡率は1968~71年の出産1,000対20.50から1975~78年の13.98に低下した.36週以上の周産期死亡率は11.58から7.77,32~35週は160.04から147.23,32週未満は576.33から539.61へとそれぞれ低下した.死因別の周産期死亡率は大部分のものが低下したが,先天異常,胎児および新生児の感染,新生児に損傷をもたらした外因によるものは増加している.そして,36週以上の周産期死亡率は17疾患,32~35週は10疾患,32週未満は9疾患が低下した.逆に,36週以上の周産期死亡率は1疾患,32~35週は5疾患,32週未満は4疾患とが増加した.特に先天異常は周産期死亡の死因して重要である.他の報告によれば,先天異常は減少しているという報告があり,先天異常のモニタリングが重要であると考える.36週以上の周産期死亡率の低下は32週未満や32~35週より大きい.同様の傾向は死因別の周産期死亡率にもみられる.周産期死亡率は在胎期間の長い児から改善されてきたことが考えられる.周産期死亡児の出産体重は小さくなる傾向がみられる.周産期における児を救命するためには,低出生体重児や在胎期間の短い児に重点がおかれるようになった.周産期死亡の改善のためにはNICUあるいはPICUによる周産期医療の地域化が重要であると考える.

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© 日本民族衛生学会
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