2003 年 15 巻 4 号 p. 205-210
施設内の栽培環境下でナスの選択収穫の自動化を実現するため, V字型整枝されたナスを対象にロボット収穫システムの開発を行った.また, 果実から離れた畝間位置において果実の検出と果実方向の推定を行うグローバルセンシングの性能を評価するため, 画像走査実験を行った結果, 以下の知見が得られた.
1) 開発したロボット収穫システムは, 制御部, センシング部, マニピュレータ部, エンドエフェクタ部および走行車両から構成され, V字型整枝されたナスの畝間を自動走行できた.畝間内に定めた原点を出発して, 左右両側にあるナスの画像を順次撮影したのち原点に復帰することが可能であった.
2) 画像走査処理時間のうち, マニピュレータの移動時間が大半を占め, 処理の高速化のためにはマニピュレータの制御方法の検討が必要であった.
3) 栽培管理者が目視により判定した収穫適期果実のうち, グローバルセンシングにより検出できた割合は69.3%であった.誤って検出した場合として, 隣接株の果実, 収穫適期前の果実, および陰を誤検出する場合や一つの果実を分離して検出する場合があった.また, 検出画像の重心位置から果実の方向を推定でき, マニピュレータによる収穫制御に利用できる.