保健医療社会学論集
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質的分析に分析者がおよぼす影響に関する考察 : 質的データの分析をどのように進めるか
瀬畠 克之杉澤 廉晴菊地 優子
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2001 年 12 巻 2 号 p. 60-71

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抄録

最近、日本の保健・医療および福祉における質的研究が増えている。質的研究は人の主観を利用する調査手法として知られているが、客観性を科学的研究の前提としている量的研究者からは"非科学的"であると誤解されることも少なくない。一方、現在の日本の質的研究者に定式化された分析プロセスが知られていないこともあって、研究毎に異なった分析が行なわれておりその妥当性を評価することが困難な状態にある。本論文は質的分析の具体的なプロセスを設定して、分析者の違いがどのように影響するかを検討した。そして、妥当性の確保された分析を行なうための方向性を考察した。その結果、異なる分析者であっても限定的ながら一定の分析をすることは可能であり、そのためには複数の分析者間で合意を形成したり、主観を利用する場面と留保する場面とを明確に区別する分析手順を設定すること、あるいは調査実行者が分析全体をスーパーバイズすることが重要であるとの結果を得た。

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© 2001 日本保健医療社会学会
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