保健医療社会学論集
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最新号
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特集 第47 回大会(2021年度)オンライン開催(日本大学文理学部)
講演I
  • 美馬 達哉
    2022 年 32 巻 2 号 p. 1-11
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    本稿では、保健医療社会学の観点から、COVID-19に関わる諸問題を考察し、とくに監視の問題を中心に分析する。社会における病気の重大性は、生物医学的な要素だけで定まるものではなく、文化的・社会的・経済的な背景や格差の影響を大きく受ける。こうした「シンデミック」の観点はCOVID-19においても重要であり、ワクチンや社会距離の生物医学的な戦略は相対化して考える必要がある。ここでは、社会距離に介入する手法が社会に与える影響を、COVID-19に即してロックダウンとモニタリング監視の2類型として分析した。とくに、モニタリング監視については、①身体ではなくデジタルデータに対する監視(データヴェイランス)、②デジタル的な監視による社会の実質的な包摂(監視文化)、③監視される者による積極的な関与(自己トラッキング)という視点から考察した。

講演II
  • 武藤 香織
    2022 年 32 巻 2 号 p. 12-20
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    On February 3 of 2000, the author was requested by the Ministry of Health, Labor and Welfare to be involved in the initial response to COVID-19 countermeasures. The purpose of this paper is to describe and share my personal experiences of several governmental expert advisory bodies. There were serious challenges; the relationship between the experts and the government, the first operation of the Act on Special Measures against Novel Influenza etc., discrimination against infected people and health care workers, risk of privacy violation on the infected people by press releases of local governments and mass media reporting, and the difficulty in collecting and analyzing epidemiological data and clinical information. For the next countermeasure against emerging infectious diseases, I hope that a mechanism can be established to allow the humanities and social sciences communities to discuss pressing issues from the initial whirlwind stage of the crisis, and then suggest their recommendations immediately to policy makers.

シンポジウム「回復の語りとコミュニティ:コロナ禍のなかで」
原著
  • 石田 絵美子
    2022 年 32 巻 2 号 p. 47-58
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    本研究では、長期入院患者を抱える精神科病棟で働く看護師の体験から、彼らの看護実践の構造を明らかにすることを目的とした。精神科病棟の看護師は、従来、長期入院患者への保護的・管理的処遇を非難されてきた。本稿で「そばにいる」「認める」「家族になる」「退院する患者を病棟で待つ」というテーマで記述した看護師たちのかかわりは、看護として明確に意識されない日常のかかわりや、あえて看護を意識しないことによって実施可能となる困難なかかわりでもあった。しかしそれらは、患者たちへの深い理解、看護者間の相互理解や他職種の協力、患者たちからの反応によって構成され、患者たちを回復へと導くという一面を有する重要な看護実践であると考えられた。

  • 木矢 幸孝
    2022 年 32 巻 2 号 p. 59-68
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    病いの症状や障害が「軽度」とされる人たちは、他者とのかかわりの中で「病者・障害者」にも「健常者」にもなれない、どっちつかずのジレンマといった彼/彼女ら特有の困難を経験することが知られている。しかし、彼/彼女らがどのようなときに困難を感じるかについての検討は部分的にしか行われておらず、いまだ検討する余地がある。そこで本論文では、球脊髄性筋萎縮症患者の語りを通じて「軽度」とされる患者がどのようなときに困難を感受するのかを探った。その結果、日常において身体に不自由を抱えつつも「健常者」としての役割も求められる中で、過去の自己が自己の中で想起されることで現在の困難が感受されること、そしてその困難の感受には各々の患者が生活をする「空間・場所」がかかわりを持つことを提示した。

  • 齋藤 公子
    2022 年 32 巻 2 号 p. 69-79
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    本稿は、がん対策基本法施行後の昨今、がん患者はいかにして集団活動に取り組んでいるかを議論した。A県の肺がん患者会を率いるBさんの語り等から、Bさんはがん患者たちによる集団活動の場で「支援する者」として活動していることが明らかになった。またBさんは、がん患者・家族を集団活動にいざない、参加者にがんの罹患経験を社会に開いていくことを促していた。「医療をめぐる社会運動」の議論に照らせば、Bさんの活動は社会運動の萌芽を持つものと捉えられる。本稿はその理解にもとづいて、がん患者たちによる集団活動が「常に可視的」でないものとして現れる可能性を指摘し、その検討を課題とした。

  • 齋藤 雅哉
    2022 年 32 巻 2 号 p. 80-89
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    本稿では、母親たちがダウン症の子どもとの関係と周囲との関係をいかにして関連づけているかに焦点を当て、ダウン症を持つ子どもの母親3人の語りを用いて、母親たちがケアを担い続ける動機づけを検討した。

    出産後からはじまる子どもとの関係と周囲との関係を取りまとめる営為は、子どもとの継続可能な生活を送るために、「妥協」「折衝」「接合」といったそれぞれやり方は異なるが、子どもとの関係と周囲との関係を取りまとめる点で類似的な生活実践を通して、母親たちが自分なりの子どもへのケアを担い続ける動機づけを獲得する社会過程である。そして、この社会過程での子どもへのケアも、継続可能な生活を送るための生活実践の一つである。

  • 松木 洋人, 大日 義晴
    2022 年 32 巻 2 号 p. 90-100
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    日本の食物アレルギー診療においては、原因食物の完全除去はすでに標準的な診療の考えかたではなくなり、「食べて治す」治療をめぐる医学的知識が浸透しつつある。本稿では、子どもに食物アレルギーのある3名の母親の語りを題材として、この「食べて治す」治療をめぐる医学的知識との出会いが、いかなる経験や実践の可能性を子どもに食物アレルギーのある母親たちにもたらすのかの検討を試みた。子どもに食べさせて治すというワークに取り組むことを要請する知識が、耐性の獲得を待ちつつ子どもの安全を守ることを基本とする知識と重なり合って道徳性が二重化するなかで、母親たちは食べさせた子どもの治療が進むという経験をするのみならず、完全除去が標準とされる状況では経験しえない恐怖や逡巡を経験している。

  • 笹谷 絵里
    2022 年 32 巻 2 号 p. 101-110
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は、新生児マススクリーニングを受検した子どもを持つ、男性(父親)の受検認識や遺伝情報に対する意識を明らかにすることである。日本では、1977年に新生児マススクリーニングが開始され、現在ほぼすべての新生児が受検する遺伝学的検査となっている。2014年からはタンデムマス法という新しい検査方法が導入され、検出できる疾患も増加した。そこで、2014年以降に出生した子どもを持つ男性にインタビューを実施し、分析を実施した。結果、対象者である男性は、自分自身の遺伝情報がわかることは問題ないと考えていた。だが、次子も含めた次に子どもを持つことに関して、「判断や決定権は女性にある」とされ、その理由として「産むのは女性だから」と回答された。回答から、遺伝情報という問題は等価であるが、「産む」ことは女性しかできないと主張され、自らが判断することは回避される傾向があることが明らかになった。

  • 杉山 祥子, 朝倉 京子, 高田 望
    2022 年 32 巻 2 号 p. 111-121
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    看護専門職は、看護を必要とする対象、すなわち患者やその家族に対して責任を果たす必要がある。しかし看護師が責任をどのように認識し、どのように責任を果たそうとしているのかは明確になっていない。本研究は、看護師がどのように責任を果たそうとしているのか、そのプロセスを明らかにすることを目的とし、15名の看護師を対象として修正版グラウンデット・セオリー・アプローチを用いた質的帰納的研究を行った。本研究の結果から、看護師が責任を果たそうとするプロセスには、看護師は看護専門職としての特性を意識化する必要があり、実践により患者にとっての利益を届ける、あるいは患者にとっての不利益を回避するという一連の内容が含まれていたことが明らかになった。看護師は実践に必要な患者の情報を収集し、治療によって患者の日常生活が妨げられないよう「関門機能」として看護師の権限を行使し、その行使した権限に対する義務を負おうとしていることが示唆された。

  • 篠原 史生
    2022 年 32 巻 2 号 p. 122-132
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    日本の精神医療体制の形成過程を明らかにする上で、精神病者処遇の制度に埋め込まれていた救貧的機能の検討は重要であると考えられるが、これまでの先行研究では軽視されてきた。本稿は、1930年代の京都市を対象に、救護法による貧困精神病者の処遇がどのように実践されたのかについて、方面委員の動向に着目した。その結果、救護法の運用を担った方面委員は、「監置を要さない貧困精神病者」を貧困世帯に見出し、世帯を貧困から救済するため、同法による病者の収容を求めていたことを明らかにした。また、その訴えは市の社会事業施策に影響を与え、貧困精神病者の収容施設開設に結実したことも示した。救護法下で貧困を理由とした精神病者の収容を推進したのは、生活に困難を抱える人の相談を受け援助を与える立場で精神病者と関わっていた方面委員であった。

研究ノート
  • 岡田 純也
    2022 年 32 巻 2 号 p. 133-141
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    ベーチェット病患者会に参加しているベーチェット病患者のQOLの特徴を明らかにすることを目的として、調査を行った。その結果、患者会への積極的参加群が消極的参加群に比べ、有意に主観的QOL得点が高かった。また、患者会への満足群が不満足群に比べ、有意に主観的QOL得点が高かった。患者会への参加状況とSF-36のサマリースコア得点は、積極的参加群が消極的参加群に比べ、有意に点数が高かった。患者会の満足度とSF-36のサマリースコア得点でも、満足群が不満足群に比べ、有意に点数が高かった。以上のことより、患者会に積極的に参加し、さらに、患者会に満足しているベーチェット病患者のQOLは高いという特徴が明らかとなった。

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