保健医療社会学論集
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特集 薬害と保健医療社会学の50年
原著
  • 田中 裕史
    2025 年36 巻1 号 p. 54-65
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/09/13
    ジャーナル フリー

    スティグマ論は、「普通」とは異なる外見的特徴がもたらす困難を解明する際に、外見的特徴が伝達する社会的情報や、外見的特徴の知覚のされやすさに着目してきた。一方、こうした見方は、外見的特徴が特定の病気や外傷などを表わす記号(シンボル)として社会的に周知されていないことに伴う困難を捉えそこなってきた。そこで本稿は、小耳症の当事者に対して行った手術痕に関するインタビュー過程の省察を通じて、「シンボル化していない外見的特徴」に起因する困難を解明するとともに、その困難の理論的説明を試みる。分析の結果、自家移植による胸部と鼠径部の手術痕は、耳の病気を表すシンボルとして機能しないため、予備知識や説明がなければ、小耳症との関係が非連続的に映るという問題が明らかになった。本稿はこの結果から、シンボル化していない外見的特徴はそれを認知する他者との間で乖離を構成すると指摘し、これを「認知的乖離」と概念化している。

  • 村上 優子
    2025 年36 巻1 号 p. 66-75
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/09/13
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、外傷により脊髄を損傷した人がそのからだで生きるということをどのように経験しているのかを現象学的記述により開示することである。データは、受傷後間もない時期の頸髄損傷患者2名のフィールドワークにて収集し、現象学の思想を手がかりに分析、記述した。結果では、Aさんの「自分であって自分でない」、Bさんの「自分でも何がなんだかよくわからない」という語りに着目した。Aさんにとっては、自分の意識している通りに自分のからだが動いていると把握できないことが「自分」であることを揺るがすような経験になっていた。またBさんにとっては、自身のからだの違和感がなぜ起こっているのかを理解できないことが自分のことなのによくわからないと経験されていた。そして彼らは、「よくわからない」等々と語りつつ、自分のからだについての理解を他者とともに更新させていた。

  • 大日 義晴, 松木 洋人
    2025 年36 巻1 号 p. 76-86
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/09/13
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は、食物アレルギーの子どもの母親の語りを通じて、「食べて治す」治療が浸透する中で、母親たちは「より良いケア」を達成するためにどのような実践をおこなっているのか明らかにすることである。分析の結果として、食事の文脈に位置づけられる母親の実践には、食物アレルギーの適切な治療という医療的文脈において、食物抗原の経口摂取と表現される実践とは質的に異なるはたらきかけや意味づけが含まれていることを見出した。具体的には、子どものための「より良いケア」を達成するために子どもの気持ちや嗜好を対象とした感覚的活動が母親によって担われていることを、母親たちの語りの中から析出した。「食べて治す」治療の浸透によって、完全除去を原則とする時代には想定しえなかった子どもの気持ちや嗜好を母親たちが参照する機会がもたらされ、「より良いケア」をめぐる母親たちの実践が複雑化し、時に判断を難しくさせていた。

  • 南 貴子
    2025 年36 巻1 号 p. 87-97
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/09/13
    ジャーナル フリー

    オーストラリア・ビクトリア州において2017年に安楽死を認める「自発的幇助自死法」が成立し、2019年6月から施行された。本法により、ビクトリア州に居住する18歳以上の成人で、意思決定能力があり、耐え難い苦痛を伴う症状を持つ余命6か月以内の終末期の患者に対して、医師の幇助による自発的自死が認められることとなった。その後、残るオーストラリア5州においても自発的幇助自死を認める法律(VAD法)が成立した。また、2022年12月には連邦議会において北部準州およびオーストラリア首都特別地域における安楽死に関する立法権限を回復するための法案が可決され、2024年6月には、首都特別地域においてVAD法が成立した。本研究では、オーストラリア各州および首都特別地域で成立したVAD法の特徴と相違について比較分析し、オーストラリアにおける自発的幇助自死の法制化の流れと課題について検討する。

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