保健医療社会学論集
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特集 保健医療社会学における方法論の未来
  • 田代 志門
    2019 年 30 巻 1 号 p. 1-2
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー
  • 藤澤 由和
    2019 年 30 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    保健医療社会学における計量的アプローチの可能性を検討するために、二人の保健医療社会学者の活動の軌跡を概観する。具体的には社会疫学の萌芽を形作ったとされるLeonard Symeと医療の質を患者の視点から評価する仕組みとその制度化において中心的な役割を担ってきたPaul Clearyのそれぞれの研究である。

    こうした研究の概観から見えてくるのは、たとえ素朴な実証主義であったとしても、計量的なアプローチやそこから生まれるデータを元にした近接領域の研究者らとの対話や、エビデンスを必要とする政策立案者らに議論の端緒を提示することには、一定の有用性があると考えられる。

    たしかに認識論のレベルから対象を相対化することにより、新しい境地を切り開くこともありえよう。しかしその一方で、既存学問とは異なる新しい領域(土俵)を、計量的アプローチという共通の言語で、他の領域の研究者らと共同して作っていくことも、保健医療社会学における重要な課題ではないかと考える。

  • 前田 泰樹
    2019 年 30 巻 1 号 p. 12-20
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    本論の目的は、保健医療社会学におけるエスノメソドロジー・会話分析(EMCA)の特徴を明らかにすることにある。社会学的研究においては、日常的な概念連関について考察する必要がある。その中で、EMCAは、事例がそもそもどのようにそれとして理解可能なのかに着目し、概念使用の実践そのものを明らかにしようとする考え方である。こうした試みは、実践の参加者たちの問いを引き受けながら行われてきた。本論では、「急性期病院における協働実践についてのワークの研究」と「遺伝学的知識と病いの語りに関する概念分析的研究」の2つのプロジェクトを事例として、対象領域とのハイブリッド・スタディーズとしての性格を持つEMCAの方針を明らかにする。

総説
  • 志水 洋人
    2019 年 30 巻 1 号 p. 21-31
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は、語りの特権化なる事態をめぐって90年代以降英米で展開された論争を検討し、病いの語り研究の現代的課題を導出することにある。80年代に登場した病いの語り研究に対しPaul Atkinsonは、それらがしばしば語りを特権化していると批判し、語りの埋め込まれた社会的文脈を体系的に分析する必要を論じた。英国の医療社会学誌を主なアリーナとして展開されたその後の論争は「科学」か「倫理」かという二項対立のもとに論者らの対立を深めることになる。本稿はこの論争の批判的検討から三点の課題を導出した。第一に、「社会」の概念化の仕方を明確化すること。具体的には、「社会」と「個人」との間の関係の概念化、および「社会」の具体的内容をどの程度アプリオリに想定するか。第二に、「病い」のカテゴリーの多様性を考慮すること。第三に、調査過程における現実的困難・葛藤を論じることである。

原著
  • 髙梨 知揚
    2019 年 30 巻 1 号 p. 32-42
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    数が少ないながらに鍼灸師ががん緩和ケアに関与しているという報告が散見されるようになった。しかし通常医療とは医学モデルを異にする鍼灸師という職種が、医師や看護師らが中心となって構築する緩和ケアの場においてどのように他職種と関係を構築しながらケアを実践しているかは明らかになっていない。そこで本研究では、6名の鍼灸師と5名の他職種を対象として、チームでの緩和ケアの実践経験を有する鍼灸師と他職種の職種間連携の実態を明らかにすることを目的にインタビュー調査を行った。本研究結果から、病院における緩和ケアの「場」において両者が「繋がる」ための「障壁」が存在することが明らかになった。こうした「障壁」の存在に対して鍼灸師は様々な「戦術」を駆使し、一方で他職種も多様性のある医療を実践するために「小さな戦略」を展開しながら、ケアの「場」における相互の「繋がり」を構築する様が明らかとなった。

  • 河村 裕樹
    2019 年 30 巻 1 号 p. 43-53
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    本稿では、精神科診療場面において、治療の方針と治療の実施の決定権を有する医師と、そうした権利を持たない患者双方が、非対称性をどのように達成しているのかを、会話分析の観点から考察する。身体を対象とする医療においては、患者を説得するために検査結果といった生物医学的事実を用いることができるが、精神科の場合は、それだけでは患者を説得する資源として十分ではない場合が多い。そこで医師は説得の技法を駆使して、患者の同意を得なければならない。本稿では、段階的な説得を試みる際の医師の発話デザインや、患者が医師との非対称性を利用して自らの要望を伝える際に、正当ではない位置で訴えを開始するといった方法を明らかにした。これらは非対称性から生じる権力によって患者の要望を医師が聞き入れなかったり、漫然と同じ処方を続けるといった単純な医療批判を超える論点である。

  • 福島 智子
    2019 年 30 巻 1 号 p. 54-64
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    超高齢社会を迎える日本では、医療資源の不足から在宅死への移行が推進されている。本稿では、約半数が在宅死を迎えるイタリアを事例として、高い在宅死率が何に由来するかを、医療福祉制度を含めた社会の在り方や利用可能な資源に焦点を当てて検討した。イタリアにおける在宅死率の高さには、死に至る過程を自宅で過ごすことを可能にする条件、すなわち要介護高齢者の家族によるケア、ケア労働者によるケアの普及が関連していると考えられた。その背景には南欧に共通する公的な福祉サービスの不足と、強固な世代間連帯の規範があり、家族主義的価値観は、安価で柔軟なケア労働力である移民女性の存在によっても維持されている。

  • 李 怡然
    2019 年 30 巻 1 号 p. 65-75
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    遺伝性疾患の患者・血縁者が、家族内で遺伝学的リスクに関する情報を共有すること、すなわち「リスク告知」は、疾病予防が治療戦略の中心となる「リスクの医学」の時代において、遺伝学的検査の受検の選択、疾患の早期発見や予防行動の上で重要とされ、医療者から推奨される傾向が強まっている。海外を中心とする先行研究は、個別疾患ごとに、伝えるかどうかの意思決定、告知の戦略、告知後の遺伝学的検査受検へのはたらきかけという3つの局面を明らかにしてきたものの、体系的な研究枠組みは十分蓄積されていない状況にある。本研究では、国内の遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)の患者・家族のインタビュー調査、ならびに複数の遺伝性疾患を対象とする既存研究の知見を参照することで、告知者の視点を中心とする「リスク告知」のプロセスの枠組みを示し、疾患横断的な「リスク告知」の研究を展開させるプラットフォームを構築することを試みる。

学会・研究動向
  • 笹谷 絵里
    2019 年 30 巻 1 号 p. 76-80
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    本稿では、1977年から日本で導入された新生児マス・スクリーニングが2014年4月から、タンデムマス質量分析計による検査方法に変化し、検出される疾患も従来の6疾患から19疾患以上に増加したことによる実施主体の運用の現状を検証した。日本では、早期発見・早期治療を目的に新生児マス・スクリーニングは導入された。だが、増加した疾患の中には死亡率の高い重症例も含まれる。さらに検出される疾患の多くは遺伝性疾患であり、子どもの疾患が明らかになることで、親の遺伝情報も明らかになる。本調査では、2014年以降の検出疾患の増加に対して実施主体はどのような運用を実施しているか、質問紙調査を実施した。結果、実施主体である都道府県や指定都市は、新生児マス・スクリーニングを「遺伝医療」と理解して個人情報に対応しているわけではなかった。今後、実施主体も遺伝学的検査としての社会的影響を考慮した対応が必要となるであろう。

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