いかにして医療従事者は「性を語る」ことができるのかを質的調査に基づいて検討した結果、患者の尊厳に配慮した医療従事者としての対応、医療従事者である自分にとっての性の語りにくさとその克服、性を語ることができると自負する専門家集団としての規範、という3つのカテゴリーが抽出された。
医療従事者が性を語ることを定義する場合は、必要な治療や看護に関する内容を前提とし、それらに関する性的な内容を語ることは当然だと認識されている。またその際に、患者に配慮することも当然だと認識されている。しかしその2つの当然に対して筆者が疑問を呈した場合、医療従事者は、性を語ることに対して、個人としての語りにくさを表現した。そのような個人としての語りにくさと医療従事者としての語る必要性との間の葛藤は、知識と経験の蓄積によって乗り越えられている。しかし自ら乗り越えることができない場合は、抑圧を生む可能性があることが示唆された。
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