保健医療社会学論集
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「チーム医療」再考 : チームアプローチでデザインするこれからの医療ケア(教育講演,<特集>第38回大会(2012年度)神戸市看護大学)
細田 満和子
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2013 年 23 巻 2 号 p. 7-15

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抄録

医療社会学においては長い間、医療の世界というのは医師を頂点としたヒエラルキー構造にあり、ヘゲモニーを握っている医師にそれ以外の医療職や患者が支配されている状況を批判するスタイルの研究が中心的であった。しかし1990年代後半の医療現場で見たもの、それは医療者同士の協働は難しいと嘆きながらも必要と考え、「チーム医療」を目指している多くの医療者の姿だった。筆者は、可能な限り対象を調べたうえでそこから問題を立ち上げるというフィールドワークを、自らの研究手法のベースと考えている。そこで実際に医療現場に足を踏み入れ、できる限り多くの職種にインタビューしたり、あらゆる場所で観察したりしてきた。すると、医療の世界にはシンプルな対立構造だけでなく、複雑な人的関係や制度や組織構造や文化があることがわかってきた。現在の医療をめぐる状況は、入院期間の短縮や在宅医療への移行を促す制度、病いや障害をもちながら地域で豊かに暮らそうとする患者の志向、制度の規制のなかで、患者の志向に応えようとする医療職の試行錯誤が絡み合っているように見える。本講演ではこうした状況で鍵概念になっている「チームアプローチ」に注目し、これからの医療に諸主体がどうかかわっていこうとしているのかを俯瞰したい。

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© 2013 日本保健医療社会学会
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