不妊治療患者に対して、養子縁組が推奨されることがある。しかし、患者が養子縁組を選択した後の経験はほとんど明らかにされていない。そこで本研究は、不妊治療を経て家庭養護促進協会大阪事務所を通して養子を迎えた女性5名にインタビュー調査を実施した。その資料を分析した結果、(1)夫、または両親の養子縁組への反対、(2)斡旋機関に養子縁組を断られる可能性、(3)養子の「試し行動」、(4)養子との愛着形成を意識してしまうこと、(5)特別養子縁組成立の不確実性、のそれぞれが彼女たちの特別養子縁組成立までに経験した困難、およびそれをもたらした社会的諸要因として示された。こうした成果は、養子縁組を選択した患者の経験を示す一つのモデルとなろう。