保健医療社会学論集
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患者・住民の専門医志向に関するへき地総合医の経験と認識 : 自治医科大学卒業医師の手記の分析
飯田 さと子
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2013 年 24 巻 1 号 p. 41-50

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抄録

総合医の必要性が高いとされるへき地で地域医療に携わる医師の手記をもとに、患者・住民の専門医志向に関する医師の経験と認識について分析・考察した。患者・住民の専門医志向は、医師に、患者減少による経営問題や技能発揮の機会損失をもたらすだけでなく、期待されないことや値踏みされることへの当惑をもたらしていた。総合医への無理解を問題視する意見がある一方で、専門医志向が一定の合理性をもつことや、総合医に関する偏ったイメージの問題性を指摘する意見もあった。専門医志向との出会いはときに、医師に実践の方向転換を迫るものであり、専門性の獲得、在宅医療など生活に近い領域へのシフト、また、住民との治療外での交流の重視が対処として語られていた。地域における専門医志向との予想外の出会いは、医師にとって、治療医学や医師の権威を相対化する視点を獲得するひとつの契機として位置づけうるものと考えられた。

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© 2013 日本保健医療社会学会
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