保健医療社会学論集
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ランチョンセミナー講演
医療・医学を語る陥穽をめぐって
佐藤 純一
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2018 年 28 巻 2 号 p. 20-24

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抄録

本稿は第43回日本保健医療社会学会大会の「ランチョンセミナー」での口演(語り)の内容を原稿化したものである。本稿の目的は、日本の医療社会学関係の研究の問題点を指摘することを通しての医療社会学批判である。本稿で指摘する「日本の医療社会学の問題点」は、近代医療・近代医学の多様性・多相性を認識しないでの研究が多いことである。本稿では、その問題点を次の4つの落とし穴(pitfall)をもって説明する。

(1)「医療=医学」とする誤謬、(2)近代社会における多元的医療の無視、(3)「近代医学=科学的一枚岩」の幻想、(4)「近代医療=病院(臨床)医療」という思い込み。

これらの落とし穴の指摘を通しての本稿の医療社会学批判は、医療社会学の現場から今、立ち去ろうとしている老兵の、現場に残る医療社会学徒へのエールになればと思っての語りでもある。なお、実際の「ランチョンセミナー」では、この内容では口演は行われていないので、本稿は「医療社会学批判―語られなかった語り」の原稿化でもある。

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© 2018 日本保健医療社会学会
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